~Spring Riding Tour~ Project Web No-3 
2006.3.5 Challenge!





廃道日記へのプロローグ 「原町森林鉄道」

 06'3月上旬、今年の冬は南東北と言えど積雪量が多く、遊びに行ける林道も殆どない状態が続いた。掲示板常連のSJ30V氏からお誘いを受けたのはそんな時期である。

 彼は昨年末に10数年ぶりのマシン乗り換えを敢行し、春には一緒に何処かに行こうと画策していた訳だが、どうにも春まで待てずに、この日
「ショートで林道走りに行きましょ」と相成った。
 行き先を聞かれて真っ先に答えたのが
「助常林道」だった。
 悪名高き未舗装県道62号線を中心に南に横川ダムから西に抜ける馬場林道、62号から北の八木沢峠に抜ける助常林道冬卦林道冬住林道(06'改訂)の計4路線は冬場における数少ない
「不凍林道」である。しかし流石に今年(06')は阿武隈山系も残雪が多く、実際に通行できるかは大変微妙だ。少なくても2月の段階では県道62号は残雪通行不可という情報もあった。
 そして助常には、昨年(注:2005年)秋にさるサイトで紹介された森林鉄道の残存軌道があるらしい。
 実際、八木沢峠の冬住林道は新田川の支流を介して助常に合流するわけだが、対岸を走る電力管理の林道が気になっていたのだ。その正体がまさか森林鉄道だったとは?サイトを見ていてびっくり仰天である。

 そのサイト、「街道Web(管理人TUKA様)」によると、新田川上流部分に当たる助常林道より西側のルートは、いまも電力の発電用導水路及び取水口管理道路として、軌道跡が林道に転用されているという。TUKA氏的には林鉄の雰囲気も薄れて萌え感に欠けるとの事だが、受け手のMRとしては
「現存・通行可能」に恐ろしく魅了されたわけだ。
 少なくともそれまでの受け止め方と言えば、リンク先の「山さ行がねが(管理人ヨッキれん氏)」のサイトを見る限り森林鉄道なんてとてもオートバイで走れるような場所ではない。それどころか、歩って散策する事すらままならぬ所ばかりだ。
 どの林鉄もその没年は昭和30年代、廃線から40年以上経過していて、鉄路どころか道の様相を成さない。しかも獣道とちがい橋落部分がある。その目前にはとても渡河どころの話ではない深い谷があるのだろう。

一介のツーリングライダーの出る幕ではない。

こんな所を走ろうと思ったら、清水の舞台ごとバイクごと新田川に飛び落ちる事は明白である。
(後日、ヨッキれん氏のサイトを閲覧するに至り、これは事実であったと確信する俺。<笑)

これらの話にSJ30Vさんも同意し、実際に行ってみる事になったのだ。しかしまあ、年の初めのツーリングが、まさか林鉄探査になるとは・・・???






「残雪との戦い」
 当日、自宅近くのコンビニに合流、快適に3桁国道を通過し川俣町に合流、町の東側を抜けて県道8号原町川俣線に入る。山木屋の7-11で休憩と補給を行う。
 久しぶりの連れが居る林道ツーリング。最近一人で走る事が多いせいか、話し相手がいるだけで和んでしまう。イカン、タバコが美味しく感じてしまう、イカンなこれは。

 八木沢峠から冬卦林道
"冬住林道"(09'追記)にアクセスする。県道沿いの常磐道延伸の看板を目印に右折南進、しかし林道入口にはチェーン封鎖。だが難なくこれをクリアーする。もと伐採道本道の冬卦林道はやがて山の稜線に駆け上がり我々を太平洋を望む峰にいざなう。

 県道舗装路ではそのタイヤパターンから大人しい走りの彼がダートに入った途端「スイッチ」が入った。
 所々に残雪がありハンドルを取られるはずなんだが、SJ30Vさんはお得意のスタンディングで雪上ダンスを披露する。とんでもねぇな、この人は。雪上なのに飛ばす飛ばす!付いて行けねぇ〜〜〜!。
 良く見るとわざと積雪部分を走り固雪の抵抗を活かしてbrake&turn!マジ曲がってるよ。

 あっというまにバリケードのある助常林道の入口に到着する。路上には、そろそろ地面で休もうかというバリケードのお出迎えを受ける。



PhotoAlbum
一部の写真に林道日記からの転用があります。

八木沢峠入口


冬卦林道・助常林道接続点



助常林道を下る。


冬卦林道
「冬住林道」(09'追記)は伐採林道の本道である。八木沢峠から阿武隈の尾根沿いを走る気持ちの良いルートだ。晴天の際には太平洋も望める。


  ここからは、車の入った跡すらない。
どうするSJ30…
「Garrrrrrr〜!」…V…さん?
 呼び止める間もなく彼は轍のない積雪路面に突入していった。挙げた手が相手を求めて宙を彷徨う。
躊躇ねぇんだもんなぁ。
 思わず、1コーナーをターンするのを確認してから後追いするMRでスた。

 助常林道の終点というのが何処か?現地には標柱が存在しないので何とも言えないが、やはりあのバリケードがあるY字路が接続点なんだろう。しかしここから下る支流部分の区間が、実は一番荒れている区間である。特に沢の西側となる今突入した部分が手強い。なんせ普通でも釜房林道状態である。まして残雪だ。橋を渡って沢の東側に辿り着けるのだろうか?一抹の不安がよぎる。
「バガン!」という濁った音と共に山側に車体ごと持って逝かれる。タッチしたブレーキレバーに感触がない、雪で滑っている。のり面に巨摩郡よろしくライダーキック!体制を立て直す。ダメだ!雪か落石かのり面か判別がつかね〜。わずか10分の恐怖だった。

 ところが沢の橋を渡り東側に出ると残雪は跡形もなく消え失せ、代わりに新田川水系特有とも言える大量の落ち葉が積もる初冬の佇まいを林道は魅せる。雪によって流線型に洗い流された沢を清冽な沢水が蕩々と駆け下っていく。沢水は林道と共にまずは飯樋川に合流。続いて飯樋川は本流の新田川に統合される。新田川に掛かる落合橋の上で休憩、地図で再確認する。

 
このT字路こそ、森林鉄道の本線なのである。

 正確には助常林道の新田川南側にある川沿いルート部分は、総て森林軌道を拡幅して造られた林道なのである。いま下りてきた落合橋から先の助常林道末尾部分は恐らく後年に林道として造られたもので、林鉄軌道部分ではない。T字路にはお約束とも言えるゲートによって一般林道とを隔壁している。早速ゲートを潜って突入する。

 助常林道とは明らかに違う一回り小さい道が、そこには存在した!



飯樋川支流沿いには二つの橋がある。


新田川本流に合流。


これが鉄道路?


新田川に掛かる落合橋



新田川に掛かる橋は異常に幅が狭い。橋脚が林鉄時代の物を流用しているようだ。
勿論、確証はないが(笑。




「迷宮鉄路」
 新田川を橋で渡る。この橋も道幅が狭い。普通車でやっと?軽自動車で丁度の寸法である。
 下はちょうど新田川の本流と支流の飯樋川合流地点で、橋を渡るとまたT字路、左が新田川本線、右が飯樋川支線となる。新田川本線の方は上流にある野手上ダムに当たるので通過が可能と判断し、まずは支線である飯樋線に右折する。
SJ30Vさん!写真撮りながら逝くから、先…
「Garrrrrrr〜!」…に……。
 呼び止める間もなく彼は突入していった。挙げた手が相手を求めて宙を彷徨う。全く躊躇ねぇんだもんなぁ。
ギアを入れてBajaをゆっくり走らせる。

 走ってゆくと、これがまた産業遺構のカタマリのような林道だ。飯樋川を渡り川の北側に林鉄路は位置を変える。つーか、だんだん路肩が崩れてきて、一部軽トラすら危険な所がある。勿論道幅も徐々に狭くなってゆく。
そしてそれは唐突に現れた。
「飯樋川隧道(命名、TUKA氏)である。



 最初の印象は
「狭い(幅がない)の一言である。
 両手を広げただけでも、左右の壁に触れられそうだ。いわゆる岩盤掘り抜きの形状である。果たして現在の規格の軽トラが通過出来るのか?と思うほどだ。
 勿論管理状況からして、軽自動車で管理しているのは間違いない。普通車はもう無理である。



 またトンネルを抜けた先は橋と堀切があり、これがまた狭い。そして、車幅そのものがここから先は判らなくなる。ここまで来るといよいよルートはとんでも無い。もはや単なる山道である。

 でも、バイクならまだ逝けるな? 2台は更にその先に轍を広げた。途中、ハイキングらしいご夫婦を見かける。道成に前進するとルートはもう一度飯樋川を渡って対岸へ。このときこの橋だけが妙に真新しい感じがした。
 渡った直後はT字路で、直進階段はハイキングコースである。残る選択肢の右折をすると、路面は白い雪に閉ざされる。一足先に着いたSJ30Vさんが、タバコを吸って対岸を望んでいる。
 ダムの取水施設だろうか?グリーンのフェンスに囲われた建物を最後に道は終了していた。

 森林鉄道には山から切り出した木を貯木し、トロッコに積むための「土場」と呼ばれる空き地が存在した。ここがそうなのだろうか?



「違うな」
SJ30Vさんが眺める対岸の崖には、無惨に落橋した林鉄の残骸があった。




右が飯樋・左が新田


石墨が続く、年代物だな。


コンクリートのけたが狭い。


切り立った崖の道。


そしてここが!


まずは歩いて安全確認。


取水口に近づく。


もう一度橋を渡る。


対岸の取水口脇に遊歩道。


なんじゃあァ、ありぁ〜!(橋1)


導水線の上に、明らかに道のような物が見える。(橋2)



「落橋・廃橋」
「何処かとりつく場所はないかな?
バイクで」
バイクで ですか?マジですかぁ?
MRは内心空いた口が塞がらなかったが、何故か
「橋を渡る手前から逝ければ・・」と即答した。
「じゃあ、逝ってみましょうか」
 
こういう時のSJ30Vて怖いんだよ、俺。前にもそう言ってスタンディングでも高さが足りないような激藪を平気で入っていったからなぁ。(身長180?+WRのステップ高250=230cm?)
 案の定
「ここから」と指さすと、いきなり杉林にバイクごと突入してるし。
 成る程、確かに導水管とともに石垣の残骸がある。地形的にもそれらしい踏み跡すらある。しかし軽量な新型レーサーほどのパワーもタイヤ山も無い旧式Bajaで斜度35°がどうにかなるものではない。こうして本日初転倒はウッズステージとなった。
 

 実際挙がってみると、確かに導水管は何かの上に埋設されている。
 導水管のためバイクでの前進は不可能なので管の上を歩くと先ほどの橋の上に出る。斜面を下る導水管と、もう1m上に向かってゆくルートがある。これをゆくと、やがて崩落した橋のたもとに出た。



 「街道Web(管理人TUKA様)」の解説によると、この飯樋線の終点は不明であるという。導水管は明らかに森林鉄道の軌道を基準に敷設されており、あくまでバイクでの突破を目論む我々の手には負えない…
「MRさん、この部分を突破すれば、バイクであの沢の奥に出るのでこのラインで逝けるんじゃ無いだろうか?」
この一言でまたしても開いた口が塞がらないMR。
「…………!!!!…?」マジ?
 提案された迂回路は橋落した部分から沢に斜面沿いに歩き、沢の緩やかな部分を渡って対岸にとりつく。幅30センチ程度の踏み足とも思えない段差を指している。
 ほぼ平行移動だが、大量の落ち葉で覆い尽くされている。沢は急速に落ちて谷底まで20m位、バイクごと転落しても落ちた橋の残骸で沢まで逝かないだろう。
つーか、そう言う問題ではない。



「いや、この路線自体の通過可能が確定的ならまだしも、折り返しの沢越えなら最初からやらない方が良いでしょう」
と答えるMR。
おそるおそるSJ30Vさんを見上げる。
「…………!!!!…?」マジかい?
ホント攻略考えている??
「そうですね。歩くの熱いから帰りましょう」
なんじゃそりゃ?。
 実は二人とも防寒着を2重3重に巡らせているので、バイクから下りて4月上旬と予報されたうららかな山道を20分程散策しただけで既に汗だくだったのだ。加えてMRの転倒と引き起こしで二人とも既にぼろ雑巾の様相である。

 オフライダーの鉄則通り、取り敢えずバイクで逝けるところまで逝ったので、ここは後日ということで折り返す事とした。
二人はそそくさと元の新田側本流・飯樋川支流の合流点に戻った。こんどはMRが先頭で新田川本流を遡る。


対岸の杉林にあるのは?。


導水管?。


道の代わりにもなるが。


下は廃道??。


ずんずん歩く。


こりゃ、見事だ。


戻って新田川にゆく。


お得意の技法。


ダム配水管が交差する。


林道から更に南側にむかう遊歩道。県道62号沿いに出るのだろうか?




 相変わらず深く垂直な掘割りが続くが取水口の近くに土場らしき跡があり、本線はここまでと思われた。

 後日これにも問題は残るのだが・・・。
しかし林道は相変わらず続いている。広域地図を見れば東の野手上ダムに繋がり県道62号に戻れそうだ。

いけるかな〜??。


ホントに逝けるかな〜?。



気が付くと林道は急速に尾根沿いに近づいていった。そして、何時しかSJ30Vさんの姿がない。気が付いて停車したところで眼下に妙な物を見つけた。
「橋だ」
 しかも明らかに道幅のあるコンクリート製の林道の橋である。だが前後の取り付け道路は見当たらない。だまし絵のように、つーか橋の上に木が生えてるよ。取り敢えず撮影し、探しに戻る。途中、先ほどのご夫婦と……
道、違うじゃん!
 ご夫婦は隣の飯樋線を1時間前に歩いていたのだ。とっさに飯樋線ラストの橋にある階段を思い出した。成る程、そう言う事か。
 とある広い広葉樹の中に大量の落ち葉に紛れて騙し絵のようにTTR-WRが佇んでいる。
彼は一人、うららかな日差しに体を温めていた。
「こういう景色って大好きなんですよ」
空を、言い知れない時間が流れてゆく。



 結局我々はダム周辺を少々散策し、例の飯樋川と新田川を繋ぐ遊歩道を確認した。例の夫婦の行程が予想出来たところで空腹を感じ、またFWは燃料補給も必要となり、やってきた助常林道に戻り県道62号から原町市内で給油とかなり遅い昼食を摂って帰路に就いた。
 帰りも結局県道62号を通り、国道399号から国道114号に経由して帰路に就いた。
 途中、県道62号の町境の下辺りダートが積雪とアイスバーンで、MRが痛恨の転倒をした以外はアクシデントもなく、というか114号に出る国道・県道は総てアイスバーンで、最も道幅の広い国道399号線を使うしか手がなかったというのが実態である。

 最後に、二本松市で洗車し、二人は別れの挨拶を交わして帰路に就いた。
 わずか200Km足らずのショートツーリングであったが、収穫とそれ以上の謎を秘めて林道ラビリンズが幕を開けた日となった。



溜息しかでない美しさはなんだろう?。


ダムサイトに到着。


管理看板がある。林道表記なし。


先ほどの遊歩道に出る。


広葉樹のだまし絵の中、佇む。春の日差しに心も温かくなる。




そして物語は第2幕へ…
(いいのか?そんな風呂敷広げて?)


途中までは逝けるが、
じき登山道になる。。



HP内林道関連リンク
 @馬場林道(バッカメキ線)
 @助常林道(部分新田川線)/境沢林道(仮)
 @新田川線@飯樋川線(東北電力管理道路/常時通行止)
 @明治林道/明治林道第二支線(バッカメキ〜鉄山線)
 @鉄山第三支線/北海道沢資材運搬線(常時通行止)
 @福島県道62号線



Tour-Topに戻る。