「気軽に乗れる元祖最強トレッキングマシン」
プロローグ
実に軽快である。
勿論、KDX125SRの様な素早いワケではない。
しかし「さあ、いこう」と思ってトレッキングシューズを履くような気分である。
キーを捻ってボタンを押せば、125ccとはいえそこそこパンチのある2stパワーが
セルモーターで気軽に使える。いや、気さくに使えると言い直すべきか。
元々レーサー譲りの骨格は、ヤマハらしい適度なしなりを伴って車体と乗り手をフォローする。
最初にして孤高の1台。それがDT125Rである。
完璧故に進化の止まった孤高のマシン。
最初に乗ったDT125Rはなかなか草臥れた88'型で、それでも初心者のおいらにとっては、まさに林道バイクのイロハを教えて頂いた記念すべきマシンである。当時はナナハンのスペアマシンとして下取り車を安く購入したが2年後にモトクロス場でテーブルトップにリアをしたたかに打ってリヤショック、アームを破損し、あえなく廃車となってしまう。その後暫くしてもう一度125ccに乗るコトとなり、手に入れたのが92'DT125Rである。
80年代のHY戦争はモトクロスにおいても然りで、切磋琢磨されたその強骨格は90年代に市販車にフィールドバックされてゆくが、同じDTの名を冠して125と200は最終的に別な乗り物に進化したことは興味深い。いかにもモトクロッサーレプリカばりの回転があがるごとにパワーとトルクが暴力的にましてゆくDT200Rに比べ、DT125Rは2St125ccらしいナチュラルな吹け上がりを見せる。また、クリッピングから開けていって曲がるヤマハらしさもしっかりある。しかし、両者を決別し、トレッキングマシンとしての高い操作性・汎用性をみせたのは何を隠そうセルモーターの採用に他ならない。セローのヒットからいち早くトレッキングに着目し、足つき性の良い足回りへの変更やリアキャリアを標準装備したヤマハの配慮には、頭が下がるばかりである。
後に、燃費だけはやたらとよいジュベル125や足回りが兄貴譲りのXLR125Rが登場するが、10年たってもDTをイチオシなのは、オフロードバイクは何より瞬発パワーという点で後発の2台を凌駕するからである。
そして、悲しいことにこの完璧さ、小型排気量ゆえにDT125Rは開発が止まり、やがて排ガスに伴う2ストローク車規制によってカタログから消えてしまうのである。
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