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廃道日記(Riding・Report)



そこには、何もなかった。
正確に言えば、
莫大な国費を費やし続ける遠大な道路と長大なトンネルの抗口、
年老いた農夫が細々と営む僅かばかりの田畑しかなかった。
いや、
石組みに挙がる石碑がある。
猪苗代湖から吹き上がる風の匂いと、不協和音を奏でる様な高速通過音。
夕日に当てられて、そこにはかつての宿場の風情も、村の営みも消えていた。
石碑には
「道路に因って生まれ、道路の為に消失した村」
と記されてあった。
三島にすら捨てられた街道。
その名を「楊枝峠」という。



この石碑が無ければ、ここにかつて村があったなどと、誰が信じるだろうか?


ご使用上の注意!
このデータは、あくまでおいらの走ったルートの覚え書きです。
走行距離は主にバイクで測定し、
旺文社発行のツーリングマップルにて無断で補正しています。
また、掲載される内容は
大変危険です。
当サイト掲載内容によるいかなる被害も、
当方は保証致しません。


このContentsは、適当に増殖します。
廃道日記(Riding・Report)009

07'秋の泥濘3連戦・その1


07'AutumnTour
「日中・裏磐梯・楊枝」に戻る。
 日中・裏磐梯の林道を走破した熊五郎・MRの二人は、国道115号線を猪苗代に南下。
 樋の口から県道323、322と乗り継ぎ、かつての沼尻鉄道の起点である川桁を過ぎ、臨時駅である磐越西線猪苗代湖畔駅から旧街道に入る。

かつての楊枝部落には午後3時すぎに到着した。

今回のルートはTouringMapple2005.3版に点線表記。(林道表記なし)

 羊の皮を被った
「旧峠」

 猪苗代側から入る楊枝峠(旧中山峠)の最初の印象は、大人しい少々急な山道であった。
 写真を撮影している間に熊五郎さんとはぐれた(あやうく隣の山に登る所だった(大汗。。。)MRであったがなんとか合流、彼に続いて峠道に突入した。
 時計は3時半くらい。地図を見るとその距離ざっと4Km位だ。


駅のある部落の端からは距離がある。
やがて磐越道に寄り添う。基本的に直進だ。


なんか、大規模な柵(雪囲い?)が見えて来る。
相変わらずの直進道。



トンネルが見える(磐越道鞍手山トンネル猪苗代側抗口)
このT字路は左折。直進すると先の「記念碑」がある。


 なんぼ何でも4時ぐらいに磐梯熱海に出るだろう、と予測した。

だが、甘かった!
この見通しは
甘すぎたのだ!

 猪苗代側は普通の林道である。
 最初に
磐越道の下を潜るとか、途中で変なクランクだと思ったら珍しい両側残る一里塚であったり、電力が鉄塔管理用に急なヘアピンをコンクリート舗装したりと・・・


左折すると磐越道の橋を潜る。
手前が下り線、奥が上り線。



 ここもクランクになっている。
道成直進は
磐越道の管理施設があり、峠にはクランク状に川を渡って右折。
丁度、熊五郎さんの居る位置と向きが峠方向。


 
経線は車が通るのにはちょっと?
という感じだ。

 作業用の軽虎なら必要にして十分な幅である。無論バイクは楽勝である。
だがしかし、
楊枝峠のサミットを夕日に照らされ越えると、事態は一変した。

磐梯熱海側は
「沼」だった。

 水源地にありがちな湿原の様な、小さな沢と谷筋に集まった水が自然に沼化するような、そんな感じなのだ。
 始末に悪いのはパッと見、それは芝生の様な短い草木に覆われている事。

 写真撮影の後、熊五郎さんに促される様に先頭を走る。
「ふ、深い・・」


いい仕事してますね。


いよいよ、突入。
でも、なんだかとっても普通林道〜



でも、なんだかとっても普通林道〜。
普通にややS字コーナ〜。
「普通って言うなァー!」


よくぞ残っていた、楊枝側一里塚!すげー!。
多分普通の人は解らないだろうなァ。


そして・・・


鬼の様な急コーナーで一気に標高を詰める!
って、せ、狭!


余りに狭く急な斜面に無理繰り造った車道の為、7枚組に撮影した写真でも繋ぎ切れない。
やむなく二つに分ける。
屈辱だ!



夕日に染まる紅葉、埋まりかけの旧街道・・・。
晩秋の楊枝峠は日没の艶やかな色合いを垣間見せる。




だ が!



ホントここまでは普通なんです。

 何気なく道の真ん中でいきなりぬかるむので驚いた。先に進むにつれて、いや、道幅が少なくなるにつれて路面はさらにぬかるんでくる。

 放置され苔生した
サンバーはいつからここに居るのだろう?、否、何故ここに居るのだろう?
「もしかして脱出不能につき放棄?」
 
そんなささやかな憶測も実は目前の泥沼を忘れる精神的逃げ場でしかない。


ここ、沢側に引っ張られる。
自縛(自爆?)霊でも居るのか?


最初の予兆。
幻覚か?カビ色の車が見える・・?


「ヤバ・・・・・」(^◇^;)
これが当掲示板を騒がせた「謎のサンバー?」!
どう見ても
「死体が遺棄されていそう」な雰囲気だよ・・・?!


と、いかにも!という感じの泥濘地、新沢橋以来、泥濘地には敏感である。(核爆
 穏やかな草地に見せ掛けて、よく見ると反対側に一条の轍がある?
思わず停車。
じっとルートを精査する。


「気が付きましたね」
追い付いた
熊五郎さんの一言!
矢張りトラップか!
 
状況はさながらベトコンに包囲された米陸軍部隊の様だ。不自然な熊五郎さんの笑みがMRの推論を肯定していた。


ここも特に何て事無い様に見えるが・・・
ほぼ泥沼



中山宿(二本松藩)側の一里塚。こちらは片方しかない。
でも
なかなかの存在感。車が展開できるのはここまでか?



地元有志により案内がある。
夜には見たくないなぁ。

「もしかしてSJ30Vさんの轍?ここが撤退場所なのかな?」
「(峠を)越えていないという事なので、多分」
「田圃だよね?」
「へっへへへへ・・
(^_^)/〜」
wぅオイ!(確定!
 
 道路右側に突入!
しかしそれも罠だった。案の定、前進不能に陥る零度君から降りて力づくでラインをずらして押し出す。

「やってくれるぜ!
師匠!」
「すげえ!アクスルシャフトまで埋まってるよ」

熊五郎さんが体勢を整えトライ、難なく通過する。


中山宿側の一里塚前には沢がある。
かつては橋?今は片桟橋?

Photo by Kumagorou


約15度程度のカントが付いていて滑る。
勿論落ちれば五百川行き。
車はもうアウチ


一筋の轍・・・・。
「埋まってる?」


フロントアクスルまで埋没したのでやむなく後ろに引き抜くMR。
「まさに田圃!」
縦に引かれた雑木はハイカー専用の様だ。
Photo by Kumagorou


「くそぅ、山側法面か!」
「やった、一発で突破出来た」
この前はアナタも捕まったのね・・?

 必殺!
 パイルドライバー

その「刻」は近づいていた。
この峠の、最大の難所で起こる
あの瞬間が。

 楊枝峠は、
さらに
熾烈を極めて来ていた。
 確かに道路右を五百川の源流である沢が流れている。
 しかし恐らく、ひと度雨となれば、谷に集まる水が道をも流れるのであろう。道路と川に境界線はなかった。

 街道と言えばこの人にして
「登山靴ではなく
   長靴が必須」

と言わしめた楊枝峠の本性が、いま目前にある。その幅は狭く、すでに二輪車以外の動力車の通行を拒絶していた。因みに後日改めて磐梯熱海側から入る時には全く道に見えない程である。


なんだよ、この一筋の轍は!
しかも深い・・・・。



道路を浸食している五百川。
別名「洗車場」


転倒!いや転落!、もとい墜落!。川の中しかスタンドが起たないよ。
Photo by Kumagorou


「これが最後の1枚」・・・愛機よ、今回もありがとう。
ちなみに、熊五郎さんの立ち位置から降りたんだが・・・
手強い!


 沢にそって緩やかに左に回るコーナーのLASTに合流する沢に呑まれた片桟橋と史跡を示す表柱が建っている。熱海側の一里塚だった。
「これで約4Km?」
「ですね」時間距離はそろそろ1時間だろうか?
夕闇が迫るひとときをシャッターで切り取り、片桟橋を渡って下ってゆく。
段々解ってきた。
 沢と考えれば、何処に地盤が現れ、どの様に水と共に流れ、何処に堆積するのか?
 仮想の水と共に谷を下ると何処が泥沼なのか見えてくるのだ。
 
だがそれすらトラップであった。

 実は五百川源流はかつての街道筋を破壊し、赴くままに流れを変えていたのだ。
 それが解ったのは、高さ1.3m程の崖っぷちに立たされた時であった。
「ここを下るのか!」
・・・・
マジですか?。
 
例によって「逃げちゃダメだ」を3回繰り返し突入!
絶対にブレーキを掛けては逝けない!
 中腰をメいっぱい後ろに逃がそうとすると、腰は自然当然リアボックスに

良く降りたな、ここ。
写真を見て改めて感動、
しかしここを登ると上級か・・<違w。

Photo by Kumagorou

突き当たった。
 
次の瞬間、体は冷たい五百川の源流に投げ出されていた。
 まず目に入ったのは源流に放り出されるETCケースだ。倒れ込む体はバイクを放棄し源流に落ちたケースを一瞬で拾い上げる。身代わりに源流に左手と両膝を捧げた。衝撃で飛び出したデジカメはどうやら無事か?
ETCの電源線を外し、乾いている石の上に待避させると、沢の中でバイクを引き起こす。


Photo No-1


振り返って、ここが何処なのかやっと解った。
ここが師匠SJ氏の言っていた「上級者コース」
だったのだ。
いや、これは確かに上級だ。
 実際は手前10m辺りで街道右を流れる川を先に川越えし
(写真Bコース)
一時川の右側を走り、いまMRが転倒した所でもう一度右から左に川越して元の経線に戻る道筋になってしまったのだ。(因みに写真AコースがMRの進路)


Photo No-2

Photo No-3
こうしてみると差ほどの傾斜じゃなく見えるんだがなぁ。



恐らく鉄砲水か何かで一気に道路は分断されてしまったのだろう。
「大丈夫ですか?!」
渓流の響きを遮って熊五郎さんの声が響く・
「ああ、大丈夫」
しっかり撮影してるよ、流石だ・・・。

 残念ながら、川底以外は不安定でバイクが自立しない、水没して重くなったオフブーツを持ち上げる様に沢から出てデジカメで撮影する。

「少し休もう」
 聞くと熊五郎さんも手前の泥濘に引っ掛かり転倒、ハンドルガードを破損していた。
 気合い一発バイクに跨ると、沢から道路に復帰する。上がった所も泥沼、スタンドを立ててバイクを置く事すら出来ない。
 振り返りざまにカメラを構えるとまさに上級コースから熊五郎さんが降りる所だった。

そして
「その刻」はやってきた。
「ん?動画撮影にならない?」
一瞬、画面にノイズが走った。すかさず電源を落としたが、既に遅すぎた。
COOLPIX3200、楊枝峠に死す

 この川を越えると、あとは問題なく脱出!大きな法面を登り上げると、磐越自動車道の測道に合流した。かつての街道は新しい交通機関に分断され続け、五百川だけが暗橋の下を流れてゆく・・・。
「でた〜!」時計は5時、僅か4Kmちょっとに1時間半からかかってしまった。
しかし通過の喜びは大きく、なかなかに楽しめるルートである。

 ツーリングの最後に廃道突破の目標を達成し、夕暮れの中山宿で熊五郎さんに別れを告げて帰路についた。

 エピローグ
  

 後日、自宅で写真の整理をしながら距離と位置をチェックすると日中線小桧沢については先の考察が残った。
 しかし、楊枝峠については通過はしたものの、日没、そしてカメラの水没という悲劇(喜劇?)もあって、その日は帰ってしまっていた。


辺りは既に暗い。写真感度を上げて撮影。
Photo by Kumagorou


最後にもう一度支流を越える。
最後までスリリングな峠越えだ。


突然道は急激に上りとなる。
既にここから磐越自動車道の堤なのだ。
峠道は寸断される。



「脱出」熊五郎さんと二人、歓声と共にヘルメットを脱ぎ捨てて道路にへたりこんだ。
「新メタボコース完成?」夏場は来たくないなァ・・。
Photo by Kumagorou


 自宅で地図を眺めると、ふと、思った。
「楊枝峠って、何処から現国道に繋がっているのだろう?」
 そして、再び始まる
「惨劇の第二幕・・・」

●楊枝峠(旧中山峠)
 
区間総延長:5.3Km
 区間:旧楊枝宿より三河林道
 分岐点まで。(全線ほぼ未舗装)
概要
 突入する林道は通常のロードマップに道路記名がない、実は旧街道です。
 現時点では、遊歩道の指定もなく、ただの山道という扱いの様です。
 猪苗代(壺楊部落)側は小型普通四輪駆動車程度でも登坂可能です。
磐梯熱海(中山宿)側は単なる山道です。しかし五百川の水源地でもあるため、大変な湿地・泥濘地であり、徒歩であっても長靴などの耐水・対泥濘装備が必要です。

調査日(07/10/27)の状況:
 路面状況は泥濘、もはや夏場はどうなっているのか?想像もしたくない程です。ただ、何となく下草が刈られている感じもするので営林所等の管理下にあると思われます
 幾つかある渡河はさほど深さはありませんが慎重に、こんな所誰も来ません。十分注意しましょう。
 泥濘地は大小幾つかありますが、一部に膝下まで埋まる深さがあるので十分注意が必要です。
 牧草地の様に植物が密生した路面状況の場所は、いずれも路盤に傾斜があり大変滑り易く、五百川への転落の危険があります。十分注意しましょう。
 片桟橋は双方の末端(前後左右)が危険な状態です。歩くならともかく、バイクの重量では床を踏み抜く危険性も否めません。動力を駆けずにゆっくり中央をお進み下さい。

 危険を感じる場合はあら始め下歩きをして、バイクが通過可能か検討することをお勧めします。また、希にハイカー等徒歩・自転車で峠越えする方もおりますので十分お気を付け下さい。
 総じて、天候が不順な時期や台風等の自然災害が予想される場合は、入山を控えましょう。

同じバイク位置で引いて撮影。
3つ目のT字路ですね。


写真右手は常磐自動車道。
奥(東)方向は、中山トンネル。

三河林道中山宿側。
見覚えのある風景でしょう?





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