今年は掲示板で誘い誘われる行事が多かった。
これもその一つである。

プロローグ
話が具体化したのは2日前位だったと思う。
大川林道アタックが調査不足の為廃案、継続審議となって、次に浮上したのがこの日中ダムだった。夜勤のこーはくさんが午後から合流となり、それならばとかねてからのお誘いのあったこのルートに行ってみる事となったのだ。

話は大峠鉱山発祥の頃、明治から大正に遡る。
当時喜多方には会津最大の石膏を産出する「与内畑鉱山」、本邦有数の黒鉱鉱床で金・銀・銅を産出する「加納鉱山」を始め、日中(現在の日中温泉の源泉を発見した)、三ノ倉、熱塩、黒岩と、大峠の南西の峰はまさに鉱山の集落であった。
無論、それぞれに管理者や鉱夫が暮らし、各鉱山は索道(鉱石運搬用ロープウェイ)と道路で喜多方駅や日中塩川駅と繋がって居た訳だが、鉱山の連携という側面から「喜多方に降りずに直接大峠と日中が連絡する道路」が存在していたのではないか?という妄想があった。
大峠アタックの際に、SJ&熊五郎氏が入り込んだ大沼への枝道があった。実は地図を見ると
この道は点線で日中に繋がっている。
大峠マイスター熊五郎氏の下見に依れば林道としての体を成しているようだ?との事・・・
これは見に行かねばばるまい!

かくして、
文献にも見あたらない未見の連絡林道に逝く事となったのだ。

07'Autumn Tour Report
「秋の紅葉を巡る・・・?」(前編)

 
Repo&Photo/MR

Photo/Kumagorou






 三度、
 紅葉の喜多方へ
   

 集合場所にはいつもの喜多方の7-11。少々給油で行き違いがあったが予定通り県道333号線を日中ダムに向かって北上する。旧日中線の終点、日中塩川駅前を通過し、目前にはぶつ切りになってとぐろを巻いている新旧国道121号線の連絡部分と、日中ダムの本体が見え始める。
 熊五郎さんが相変わらずの華麗なステップでバイクをターンをさせて、2台は国道に別れを告げ、ダム本体に狙いを定める。目前に迫る日中ダムの取付道路を駆け上り、防堤本体のさらに奥の外周路に駆け込んでゆく。
 随分草臥れた通行止めの簡易ゲートを過ぎると、舗装コーナーの路傍に林道標柱が起立していた。
 思わず止まって写真撮影。
 そしてダムに架かる橋「日中大橋」を渡り対岸へ進む。 
「これはもしかして、あのリーサルウェポンレポにあった・・」
不思議な吊り橋だな。ふうむ、確かに変な錯覚を覚えるな?

 小高いダムを見下ろすT字路で、先に行った熊五郎さんが微笑みながら待っていた。目が悪戯っぽく輝いている。


PhotoAlbum

★今日も遅刻気味だよ、常磐道から。

★熊五郎さんと合流、一路日中へ。


★標識から右折!いよいよ日中ダムへ。


「こっちがどうやら旧道みたいなんですよ。逝ってみます?」
「逝ってみよう」
 会津には林道の旧道が多い。
 最初は山菜取りの山道や簡易道路、それを拡張しただけの林道が、後年の森林開発でより大型の重機が入れ易い様に経線変更や換線を受け、旧道化する事が多いからだ。
 この林道日中線も後にダムが出来て、それまであった林道が大きく経線変更しているのだろう。
 しかし、旧道はさながらプランター状態でとてもバイクの入れる状態ではなかった。時間的制約がある今の時点では諦めざるを得ない。




★なんとなく通行止め?なゲート。


★林道日中線、起点。
熊五郎さんのいる地点から約5Kmとあるが・・・。


★写真右手の真新しい橋からは別林道だったが、この時点では解らない。
日中林道は左のようだが、当日は未確認。


見た事があるな?この美しい橋は。



 さらに元の林道を登ると、ダムの縁に当たる所に外周林道との分岐と思われるT字路に出る。物珍しさにあちこち見ていると、熊五郎さんがパフォーマンスをしてるので記念撮影。
 これ、年賀状にでも使います?(笑w

 そして緩い霧雨の中、しっとりと色づく紅葉を散策しつつ、小桧沢沿いに日中林道を登ってゆく。林道を2台は交互にそれぞれに感じ入った所でバイクを止め、撮影。その横を一台が抜いて先のポイントで撮影、撮影の間にさっきの一台が抜いて・・を繰り返して進むのだ。
 時折、2台とも同じ所で止まって、シャッターを切る。
「綺麗ですねぇ・・」
「雨の林道も紅葉はまんざらじゃないなぁ・・」
「ホントに紅葉TOURINGになっちゃいましたね」



★にこやかに待ってるよ。


★しかし道に見えないよ・・これ。



高台からは 日中ダムを見渡す丘。


 魔の門へ・・・    

 やがてヘアピンと滝が交錯するポイントに出る。
 先ほどの旧道はゆっくりと標高をあげるが、現道は沢沿いの崖下から急速に登りを辛くする。コンクリート擁壁も混じる岩肌は人工とは言え見事な滝だ。
「おお〜〜!」
 しばし、見とれて佇む。
 MRが写真撮影する間に、先行した熊五郎さんが道ばたに
怪しい物体を見つける。
「何ですかね?標識のようですが」
砂防流水標である。まるで宝物でも掘り当てた様に喜ぶ二人。


★ダム湖の奥で周回林道と分岐する。


★身構える熊五郎氏、目前には黄金の道。










★美しい紅葉を満喫。コーナーを紡いで登ってゆく。




「お、路線名が書いてある。撮影しときましょう」


 この時初めて、我々が居るのは日中林道ではなく
「林道 小桧沢線」であることが確認された。
 先ほどの橋から対岸がそうなのだろう。すると、橋を渡らず護岸沿いを進むのが日中林道という事になる。

 疑問を抱えつつ先に進む。
時折、美しい落ち葉の絨毯に足を取られつつ、2台はさらに登りあげる。再び小桧沢を渡り撮影しながら、やがて旧道とおぼしきルートの合流点に到達する。
こんな所にまである工事看板に出迎えられる。
「どうします?」
と旧道を見る熊五郎さん。



★溜息と共に紅葉を巡る。


★断続的に舗装があるが、基本的に未舗装。



★先行した熊五郎さんも写真撮影中(笑w。








★そして、新旧林道の分岐点に到達する。
ここから先は「地図上点線」



「ダメだった時には回ってみよう。いまは本道の確認が優先ですよ」
「わかりました」
ここからは、
どのROAD MAPを見ても点線表記である。


 この地点の標高は800mを越える。日中ダムが400m程、上の大沼付近で1000m程である。
コの字に曲がり込む砂防ダムを過ぎると、道は急に細く感じられた。
 使われて居ない為に植物達に浸食されているのだ。それ故か、紅葉もひときわ美しい。この
砂防ダムの部分は沢の表記がない、その為にMRらはこの時点で道を見失った事になる。
 そして
小桧沢に背を向ける様に曲がった先にその門が待ち受けていた。



★道は次第に狭く、荒れてゆく。


★最後の人工物、砂防ダム。










これが!
「小桧沢Heaven'sGate」
である!。

Photo by Kumagorou




  道は先に続いていた。
 この門を突破しなければならない。まずは入念にルートを歩いてみる。手前に高さ30センチ程度の倒木、時間差攻撃を仕掛けるような位置に見事に高さ1m50センチ程度にもう一本。フロントアップして手前を乗り越える頃にライダーの顔面にエルボーを喰らう?という罠。て、手強い。
「取り敢えずやってみますね」って、判断速いなぁ、と思ったら
いきなり天元突破かい!熊五郎さん・・
 猛然と高周波の排気音を響かせてDTは門のど真ん中に中央突破を試みる。

ひときわ甲高い排気音が止んだ後、無事一本目を飛び抜けたDTは二本目に斜めに立て掛かってエンジン停止。無茶苦茶だよ・・・?
 熊五郎さんはバイクを降りて渾身の力でDTを押し、無事GATE通過を達成する。バイクを立てた熊五郎さんが満面の笑みでこちらを振り返る。
 そんな根性も技術もないMRは当然必然路肩の法面に突っ込んで倒木の根本をかわす。熊五郎さんがガイドしてくれて、零度が無事に通過する。
いやもう、二人とも汗だくである。

>渡れない三途の川
 一息つくと熊五郎さんを先頭に二人は走り出すが、僅か200mで世界は終わってしまった。突然沢に遮られる状態で道路は唐突に寸断されてしまったのだ。沢と言うにはあまりにも境界のハッキリした道のようでもある。
一つ言えるのは、ここが雑木林と植林地の境目であることだ。
「ダメっスね。」
「これは越えられないなぁ」
「ん〜もう少しなんですよねぇ」



★越える?
ここを?まさか・・
haha・・。




一応ここは林道なんですけれど・・・・撤退!


そうあと100mも登ればほぼ尾根と言える高さまで来ていたのだ。申し訳なさそうな表情の熊五郎さんがほぼ直線に見通せる沢を見上げていた。
「またアレを越えるのか・・・」
いま、越えたばかりのHeaven'sGateをもう一度越え、現世に復帰せねばならない。
しかし、今まさに二人が荒らした路面はさらに手強く、帰りの方が時間と労力を要求した。やはりタダでは帰れない。



疲れたよ。軽いDT200はともかく重いReid君にはキツいよ・・


「どうします?」
「旧道に回ってみましょう」
 汗だくのヘルメットが冷たい、まだ湯気が登っているよ・・・。
 2時にこーはくさんと合流の約束なので、途中で昼飯を食べてと逆算するともう1時間位しか余裕は無い。
 時計を見ながら5〜10分程休憩して二人は再び走り出した。小桧沢に出るコーナーで何げに沢の上流を見るが、人が出入りした痕跡はない。沢の先に道の様なものは見えなかった。
 先ほどの工事看板を再び確認し、こんどは旧道へ。


旧道は快適に走れる、問題はない。
通行止めな以外は



★ここがどうやら現場の様だ、砂防ダム工事だろうか・・・



 いかにも、という感じの林道が暫く続く。地図上は点線だが、まるきり下の小桧沢林道かそれ以上の状態だ。途中、小さな土場があり最近でもちゃんと営林している事を伺わせる。

 工事看板にある補修はここの様だ。
やがて大きな土場に突き当たるとそこからはまさに伐採道。試しに零度で突入を試みるが予想を大幅に上回る激坂にいきなり転倒(笑w
熊五郎さんに助けて頂き、土場に戻ってくる。広い土場だが、奥は沢になっていて他に道はない。
「ダメだこりゃ」
「それらしい入口はありませんね」
「地図上では繋がるんだがなぁ」
「戻りましょ」
そして、帰り際に気が付いた。
「MRさん、あれ!やはり今居た土場の奥からだったんですね」
「でも直後の沢を渡れない、橋がないだけじゃない」
「相当の高低差がありますね」



★林道の末端、残念ながら繋がらない。



★ホントに繋がらないのか?疑問を残しつつ撤収。お疲れ様でした。

 
おそらく土場の拡張に伴い土砂を充填したのだろう、ざっとみて旧道床と土場の落差は1m位、沢も越えるのは難しいだろう。
「来春だな」
二人はダムまで戻る事とした。



 衝撃の昼食    

「お昼はラーメンで?」
「いいんじゃないですか、お勧めがありましたら、ぜひ・」
れんが亭ほまれ食堂ですかね。僕が知っているのは」
「あ、ほまれ食堂行った事ナイ、行きましょう!」
 熊五郎さんも驚く事に、店は知らないうちに
日中温泉から日中役場の方に移動していた。しかも当然新装開店、とても綺麗でルーミーな店内。



★見た目以上に美味しいピリ辛です、美味い!。


早速注文、「見せて貰おうか、四川風喜多方ラーメンとやらのお味とやらを」と何故か味噌ラーメンを頼むMR、熊五郎さんは四川風坦々面を注文。
と、携帯にメールと留守電があるではないか?
「あちゃ〜」
「こーはくさんですか?」
「来れないって、土湯は紅葉渋滞らしいね」
「裏磐梯も凄いでしょうね」
「多分ね、どうします?
別に楊枝に拘る必要はなくなったんで、熊五郎さんの逝きたい所にいけるよ」
「んん〜、何処かお勧めはあります?」
「ハードで?」
「いいですねぇ」
「山形に出ますか?西沢林道・・」
 地図を見ながら計画を練り直すと、頼んだラーメンがやってきた。
 たしかに四川風?ピリ辛がいい。
餃子も美味しく頂いて、午後の部が始まった。

 峠に呼ばれた男    

 店を出ると、改めて見るバイクのあちこちに葉っぱやら枝の切れ端が刺さったままだ。ちょっとお店に来る風情じゃない。
「あれ?」
熊五郎さんが気付いたのはクーラントの洩れだ。よくよく見るとラジエターの根本から伝っている。
 
「ガスも無いので取り合えずスタンドまで走って様子を見ましょう」と熊五郎さん。しかし、事態は思った以上に深刻だった。
 スタンドに付く頃には
滴る様に漏れているではないか?あわてて工具を使ってカバー類を外して見ると、どうやら木の枝がラジエターホースに差し込んだ様だ。
ホースの金口に当たる部分が裂けている。




★取り合えず外して見てみる。
そして応急措置を・・・。



★午後から裏磐梯へと逝く。
実はバリバリ抜いてます。
とんでもなく飛ばしてます、ええ。




しかしそれ以上に大渋滞の小野川湖周辺
右手のドアミラーと左手の紅葉を眺めて?
(よゐこはマネをしては逝けません)。





★とにかく・・きれい。
Photo by Kumagorou

★一番良い日に来たよ、コレ。


応急措置としてビニテ巻きの後タイラップ2重巻きを噛まして液漏れは止まった。
「こりゃあ、遠くには逝けませんね」
「つまり近くは大丈夫?と?」
ニヤリといつもの笑みがこぼれる。
「楊枝位なら大丈夫でしょうかね?取り合えず途中まで走ってみて、漏れるなら帰ります。持ちそうなら楊枝ですかね?」
「楊枝峠によばれてるなぁ」
「そうですね、遠くまで逝く訳には・・会津圏内なら何かあっても大丈夫でしょう」

 かくして、午後1時半に喜多方を出た二人は国道459号線に乗り、檜原湖畔の約3Kmの渋滞を総てすり抜け、2時に裏磐梯の五色沼前を通過、そのまま秋元湖岸林道に突入した。美しい湖と中津川渓流、素堀の隧道(竣工年不明)を抜け、金堀の部落からレークラインを跨いで市沢トンネルを通る。
 木地小屋から国道115号に合流、国道を猪苗代に南下し、樋の口から県道323、322と乗り継ぎ、かつての沼尻鉄道の起点である川桁を過ぎ、臨時駅である磐越西線猪苗代湖畔駅から旧街道に入る。
かつての楊枝部落には午後3時すぎに到着した。



★森林鉄道時代の素堀隧道を抜ける。
Photo by Kumagorou


秋元湖岸林道を早駆ける。



そして、楊枝峠に突入する。



自宅に帰って地図を見ると、何だか地図位置の距離、写真と地図上の整合性がつかない。
「ひょっとして・・?」

もう一度現地で照らし合わせしないと、最終位置確認となる砂防ダムの位置が掴めないのだ、
これには困った。
もしかして、ルートが間違っているかも知れない。
また案内して頂いた熊五郎さんの距離感とも違うようだ。



廃道日記
「楊枝峠」へ。