プロローグ 憧れは深夜の峠を越えて


 夜明けの冷気で目が覚めた。
 借り物のミニキャブが思ったよりマキシムだったのか?積載したKLX125が思いの他ミニマムだったのか?
運転席のシートが倒せて眠れたのは非常に都合が良かった様だ。
 どうせ1年振りのキャンプツアーに興奮して眠れないのは判っていたので思い切ってミッドナイトドライブ・・・いやいや、トランスポーテーションだな、実際。自宅から下郷まで
2時間切って走れるから深夜の運転が好きだ。

 金曜の深夜に羽鳥湖を抜けるなんて20年振りくらいだが、下郷を過ぎた辺りから睡魔に翻弄されて、見覚えの在る駐車場で仮眠を取ったつもりが、気がつけば朝だった。
 時計は午前5時半を指している。
ほぼ
「遠足前日の小学生」だよな、俺。

 見覚えの在る駐車場って、ここは七ヶ
岳林道の入口、針入部落の除雪センター駐車場じゃないか?(少々説明文的だが)

頭の上には積載して来たキャンプ用品が山脈に見えていた。



●12日、一般的な話で言えば
 結局、駐車場で二度寝してしまったが、取り敢えず目的の久川キャンプ場に着いたのは
12日の朝8時前という早さだった。
 それなのに、登山客一組約7人程が既に出発の準備に入っていた。皆、MRより年上の方々だ。
 横目に見ながら、入口の管理事務所前で炊事棟まで5m程度の道路入口近間でテントを決めてしまった。
 
どうやら、管理人は常駐ではない様だ。
 どう見ても小型のポストにしか見えない、料金ポストが入口に在った。
 荷物の整理と着替えをしてみて、とんでもない失態に気がついた。

「シェラフ忘れた」
・・・・・・・・・・・・・・・あはははははははは、はははははははははは・・・・はぁ、
 夜、ランタン反射板あるから大丈夫かな?
いやいやいやいやいや、マズいだろ会津の山奥だぞ、何か掛けるもの買ってこなくちゃ。最悪車で寝るか・・・?
 おぉじぃさんらの到着時間が大体決まったので日中に予定の林道を回る事とした。
 夕方彼らと田島で合流して食材・・・
「買い置きのレトルト食品が無い」。バイクに装備を確認して・・・「スコップが無い」・・・何だ、忘れ物ばかりじゃないか?ホント小学生以下だな、俺。

 かくして、一般的なキャンプスタイル
(って、ファミリーキャンプの事だよな?)に則って、テント、タープ、バイク用予備タープ、2台のテーブル、チェアー4脚、バーベキューコンロ大、ガスレンジセット・・・

Photo Album


尾白山登山口とある、お城の間違いでは(笑。
ここが小塩塩ノ又線の出入り口だ。



"林道入口にゲート無し!!" 頼むから工事は休みでいてくれ・・・(笑w


 
ツーリングキャンプには有り得ない豪華装備となった。一人なら持て余すが、多人数には丁度良いだろう。腰の据わったアタックには十分だろう。
 バイクツーリングとは地べたからの距離が違うよなぁ、バイク旅に脚の高いテーブルは無いものなぁ、一般的な話で言えば。
と感慨に耽った所で、取り敢えず10時過ぎに出発。
 まずは最も手近な「小塩塩ノ又線」に入ってみる。

●遅い紅葉
 小塩塩ノ又線は一昨年の台風以降、断続的に通行止めを繰り返し、昨年ついに川際の道が何カ所も川に崩落し通行止めとなった様だ。
 連休だから工事は休みだろうとタカを括っていたが、テントを張り終えた9時前にキャンプ場の前を作業員を載せたハイエースとエルフダンプが通過したのを目撃して、今日も工事続行を確認したのだったが、いやいや林道工事じゃないかもしれん。
と、イヤな予感を封印して・・・
ゲート開いてるぞ?予感は的中か?


工事期間は平成25年11月29日までとある。


路肩のあちこちで新たな路盤補強がある。
沢は前に見た時とまるで別物だ。


工事現場に突入 誰もいない、往けるか?


 小塩塩ノ又線はレポート組んだ6年振りだろうか?川端の道は凡てコンクリートの擁壁が組まれて生まれ変わっていた。

 似て非なるMRの知らない林道に生まれかわっていた。

 工事車両が通る為に路面も引き締まって安定して非常に走りやすい。新調したM51タイヤの挙動確認も含めて、軽く飛ばす。
 路肩の工事は終わった様だがガードレールなどの安全装備はこれからの様で、否 付けないのかな?とにかく何も付いてないので突っ込み過ぎに注意する。

沢ごと道を造り直すか?
一度土石流で流された道路を、路肩ごと造り直している。


「だー!! 工事中だった。」
路肩は一度沢以上に掘り下げ、基礎を作るのだろう。


 全然覚えのない広い河原にこれまた初めて見る直線コース・・どうやら相当凄い被害だったのだろう。まあ只見線の鉄橋が流されるくらいだからなぁ、2日で300mm位降ったんだよな確か?しかも、10月中旬なのにゼンゼン紅葉してない。地球温暖化の所為か?

 その直線には工事事務所があったが、人気は無く閑散としていた。おお、工事は休みカモ!俄然アクセルを開けて登り出すが、2Km程登ってゆくと、唐突に工事現場が現れ・・・やっぱり工事中だった(瀑。
 しかも道は完全に川に流されて、現場では擁壁の基礎工事が横置きのユンボで急ピッチと言う所だ。道そのものがまだ無いのである。
ここは写真に収めて止む無く戻る。




そして界林道を目指し、まず山神・界線へ!


台板橋の神社ってここかな?大石沢に沿って林道は登りとなる。


 
次は界(さかい)林道に行く。
 玉川林道は駒止峠から博士峠の麓を南北に繋がる林道だが、途中西に分岐する界林道がここ7〜8年ずっと通行止めだった。
 ところが昨年、通行止め看板が消え封鎖が解除された様だが、時間がなく走る機会が無かったので行ってみる。

 国道289号線台板橋付近からの接続林道である神明〜界線に入る。
 そして予想通りの完全舗装路だが、1Kmほど入った所で毎年恒例のBMWジャパン&昭和村共催のラリーレイドのチェックポイントがあって少々驚いたと同時に、相変わらず人員不足の誘導・広報無しかと溜息がでる。


お、車とテントが在る?
あのビーエムのラリーのチェックポイントだった。
「出入口に看板建てろ!」


シャッタースピードの為か?時速34Km/hでも速く感じるな(笑w


ヘアピンを幾つも繋いで標高を高めてゆく。舗装路が気に入らない。


 事故が起こらない事を祈りつつ舗装林道を駆け上がるが、後続や対向車も無く、天気は無情にもポツポツと雨降りの様相だ。
 
今年は昨年以上に紅葉が少ない気がした。
 神明界林道の終点は界林道に三叉路で繋がる所で国道401号線高清水自然公園の出入り口付近が終点まで、ここからずっと舗装。

ここから東の起点である玉川林道の起点までは峠を含めて、まだダートの様だ。


ひとしきり上り詰めると尾根ぞいの道になる。進行方向は北東から東へ。



確かに伐採中だわ。


山神・界線。幅員3.5m、総延長7.701Km

そして道は終点に向って北から東へ。




そしてここからが(というか横切って接続している)"界林道(本線?)"
ここからいよいよダートである。


 三叉路では森林組合の方が大型のユンボで伐採道の建設中だった。許可証を見る限り、界林道一帯が現在進行形の森林間伐の為の林道開削を許可しているようである。

 成る程、
長年道路欠損で通行止めだった林道が復活した理由が見て取れたので、気持ちよく林道に突入する。

 ゲートのない林道を名も知らぬ沢沿いに登ってゆく。
 小さな路面欠損が2カ所程在るが、昔見た10m程に渡って沢落ちした路盤は、コンクリート製の路盤補強も真新しく修復されていた。
 路面状況は良く、路肩にはダブルタイヤの跡が残る締まった路面だ。
 沢と別れると道は直線を増やし、七が岳林道の尾根部に近い雰囲気になるが、生憎の天候は霧となって望遠を赦さない。
 あっという間に界林道の名も知らぬ峠に到着した。
 かつては熊笹とススキに埋没し、路面もよく見えなかった林道の峠は綺麗に下草も刈られ、営林造成の見本の様な出で立ちだ。
「・・・枝道が出来ている」薮で見えなかったのか?
 かつての車2台がやっと停められそうな小さな峠はいつの間にか
十字路になっていて、ここで10tトラックの展開も出来る程に広々としていた。切り出した木をここに貯木していた様だ。

 ここで、北側の少々昔に作られた枝道に入ってみる。
 因に界林道を挟んで向かい、南側の伐採道は開削した法面も赤裸々な新道と思われた。
 手持ちのiPadminiの地図には無論、無い林道だ。


通行止めに至らしめた路盤欠損は、
綺麗に直されていた。


だがしかし!
その先の部分崩落は手つかずで、山側の
法面を削って道路にした様だ。



峠付近昔はススキの海だったが、随分整理された。


界林道の名も無い路面が見えない程のススキはもう無い。
代わりにここは交差点となっていた。



紅葉が、ぽつりぽつりと見えた。
 落ち着いた紅色に誘われてKLX125を走らせる。

 箱庭の様な小さな尾根を半周したが、奥に行く程杉の造林で紅葉をする様な木が薄れて来たので引き返し、写真を撮って戻る。
峠の標高はざっと1000m、
ホントに紅葉してないな〜。

 峠から500m程下ると、見覚えの在るコンクリートの橋が現れ、その先はT字路で玉川林道に合流。時計を見ると1時だ。
 例の出入り口を確認して、一旦キャンプ場に戻り買い出しと出迎えに行こう。
 霧雨となった玉川林道、去年も雨だったよなぁなどとボヤキつつ、針入の部落に降りてゆく。

●合流、そして 
 おぉじぃさんら一行は、朝からタイヤ交換の上合流、軽虎に積載と準備して、お昼前に4人3台に分乗して福島を出たと言うメールが入っていた。
 針入部落に戻ったものの、いつもの針入簡易郵便局前のログベンチでヌルい缶コーヒーを飲みつつ、止まない雨に見切りをつけて戻る事とした。
その前に確認すべき場所が幾つか、ある。

 大鞍山スキー場の正面入口向い、駒止トンネル側下り車線である。
 あるある、
それらしい道がある。
 
春先と違って大分茂みに隠されたが、それらしい陰りが在る。KLXをトツゲキさせてみると、茂みの扉の奥に道が出て来た。
 足下が思った以上にぬかるんで居たが、僅かに道らしい痕跡がある。まあ明治時代の道は荷車メインの山道だからこんなモンだろう。

北側の枝道に入る。ぽつんと萌える紅の小枝に誘われて、記念撮影。


玉川林道に降りる短い下りには、
龍が棲んでいる様だな?


界林道終点標柱。
昨年まで隣の草むらに寝込んでいたが、誰かに助けられた様だ。(笑w


針入簡易郵便局で雨宿り(笑www
バイクごと雨宿りが出来るので助かるなぁ。


 15m程登ると、1m程の段差の上は鬱蒼とした杉林だ。バイクを降りて段差を登るとキノコ狩りの里道にしては妙に広い道が杉林の奥につづら折れに続いているではないか?
「在った・・・・」

匂うのだ。
 
只の山道ではない独特の雰囲気が在る。言葉にして表現するのが難しいが、江戸生まれ明治改修の道に在る特有の陰りを感じるのだ。
 この段差の部分こそ解せないが、この杉林を迷走しながら登るのは、かなり車道(この場合は荷車や馬車が走る方ね)っぽい。
 つづら折れの真ん中にいかにも人が歩く為の細い山道があるが、ほぼそれを無視して斜面一杯につづら折れの道がある事が"らしい"のだ。
 取り敢えず、出口が確認出来たので今日は帰る事とした。待っていろ旧旧道、明日必ず完貫してやる。


凄いな。




晩秋の柄倉橋旧橋から奥に見える赤い橋が「現柄倉橋」だ。
下を流れるのは小屋川である。



 もう一つ寄り道、それは旧道沿いにある旧橋群だ。会津は屈指の廃道王国と言えるほどに旧道放置が多い。橋もトンネルも新道に更新された後もそのまま放置のケースが多い。
 また、道路としては廃されても、インフラなどがそのままの為、管理道として余生を送る道も少なくない。
 今回訪れた
「柄倉橋」も優麗なアーチ型のそんな橋だ。
 国道から直ぐ見えるこの橋は、戦前のPC橋と思われたが何故残っているのかと思って通過してみると納得した。
 橋には水路橋の機能も備わっていたのだ。会津らしい水辺と紅葉を堪能する。





この時代ならではの意匠、化粧。
良く残っていたが、銘板は残念。


現行の柄倉橋。
こちらも独特の赤い欄干の意匠だ。


橋が取り壊されない理由。
それは用水路も兼ねているから。インフラを加えて、橋は生き延びていた。


 キャンプ場について着替えをして一息着くと、メールを見て驚いた。下郷を通過したと言っている?改めて時計をみて驚愕した。2時半じゃないか!何十分も俺は旧旧道で惚けて居たのだろうか? 1)10分、2)30分、3)一時間、さあどれだ?
そんな事言ってるバヤイではない。
レンタルミニキャブ号は急ぎ田島のヨークに向った。
 


久川キャンプ場は雨。
奥が先にMRの張っておいたタープ。増員に伴い、タープにドカシーを追加。
RMXもやがてウエイトとなる運命なのだ(爆!



 3時過半すぎに晴れ間の見える田島に着くと、買い出しはおぉじぃさんに任せて近くのホームセンターに行くが、折り畳みのスコップは無かった。 
 代わり?に薄手の毛布を一枚買って合流する。
 BS選手供出の軽虎に2台の2/3型セロー225の各1台、T師匠は改造スターレットにお馴染みRMX250、Sクンは軽虎にXR250とキャンプ用品という具合だ。
みんなニコニコしてるな〜。
 夜は焼き肉だそうで、何はともあれ車を4台連ねて古町に戻る。



仕事柄?パトカーの廃車から調達、改造した自作「HID強力ランタン」。
眩しい程に明るい。




古町温泉赤岩荘露天風呂。帰って来てから気づいたんだが、
「俺が昔入った時と、湯船の仕切りが違う!!」


 駒止トンネルを抜けると三度雨模様だ。キャンプ場では早速ビール片手にテントを張って、夕食を食べる頃にはもうあらかた出来上がっていた。
古町温泉の日帰り温泉「赤岩荘」で、閉店間際に温泉を堪能する。
ほぼ貸し切り状態で時折吹き込む雨が露天風呂を逆に快適にする。湯船から雨雲の合間に見え隠れする三日月を眺めながら、いよいよ明日からの本命である廃道行脚に胸を膨らませるのだった。


やっぱりキャンプには焚き火だよ。
ワイルドだろう?



そして二日目の朝毛布とランタンで寒さを凌いだゼ!。



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2013秋の廃道"南会津秋の陣"Tour
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