次の林次の廃道日記に。にむ。


廃道日記(Riding・Report)

「光と影」という言葉がある。
観光客で賑わうこの里山の風景も、
先人の努力と苦労があってその繁栄を謳歌している。
廃れるとは、
そんな苦労の時代の抜け殻、感傷と言えよう。
しかし、
それは決して忘れてはならない小さな歴史である。
今ここに、
そんな里山のおとぎ話が消えようとしている。


ご使用上の注意!
このデータは、あくまでおいらの走ったルートの覚え書きです。
走行距離は主にバイクで測定し、
旺文社発行のツーリングマップルにて無断で補正しています。
また、掲載される内容は
大変危険です。
当サイト掲載内容によるいかなる被害も、
当方は保証致しません。


このルートは、近隣住民から上記のようなクレームが出ているルートです。
散策するハイカーなどに十分留意願います。
また、このReportは
通行を奨励するものではありません。



このContentsは、適当に増殖します。
廃道日記(Riding・Report)003-3


 我々の足も遠のき、あれから5年・・
いまや十万劫ヒルクライムは、過酷なサバイバルと化していた。


 
十万劫山はその頂上に水神様を奉る山で「信夫細道」の一旦を形成する歴史的な山道でありますが、現在のルートはやはり造林を目的に造られたモノのようです。現在はその一部を携帯電話のアンテナ塔などの管理道路として生かされていますが、使われない部分はここ数年廃道化が進み、一部は車両が通れる限界点まで来たことが言えるでしょう。と始まった十万劫山でありましたが、前編をご覧の通りもはや昔のような車での通行も不可の状態でした。

 おそらくは道路管理者が管理をしていない状況である事は、調査日に地元の方からの聞き取り調査(湯飲み話?)からも明らかであり、例え遊歩道指定であっても、余りにも荒れた行程なのはバイクが入る入らないに関わらず問題なのでは?と思うほどの状況だった。ハッキリ言って歩く事すら危険な路面状況である。そして決定打とも言えるこの一言。

「毎年福島市観光課ではGWの「みどりの日」にあわせて「安寿と厨子王」ゆかりのこの道をトレッキングする行事があったが、道が荒れすぎてここ数年は本道を使わず、別ルートから登っている」らしいのだ。
(しかし市のHP上ではその様な企画は確認出来なかったが。)

 これは、他の廃道にも言えることだが「通らない/使われない」事が最大の廃道化の原因であると信じて疑わない。利用する方が居れば最低限通れる状態が維持されるわけで、十万劫林道は昔のような林道ではなく単なる古道(ハイキングコースと銘打つには荒れてる気がするので)になり、いずれは足腰の弱い地元のじいちゃんがカブで山菜取りに出かけてスタックする場所となる事だろう。
 山里の住民が利用できないのも如何なモノかと考えてしまうが、既に林道としては「廃道」に属する?ということか。相馬街道(国道115号線)の原点とも言える道なのだが、残念である。


バイクのある地面が本来の道路高さ。中央部分はすっかり流失してしまい既に川底状態である。これは自然の成り行きであって、車両通行のせいではないだろう。
中央は泥濘、両端も泥で滑りトレッキングコースと銘打つのはどうか?の路面状況だ。


 西側からの再突入。
4

 
2月後半から3月中ごろまでの暖かな陽気は年末年始の豪雪を溶かし、標高500m辺りの各林道は4月並の良さという状況を踏まえて、時間が空いたさる土曜日の午後に突入となった。
 前回の経験からオフロードブーツではなくアグリブーツ(ドカシュー(ズ)ともいう)を持参。林道入口の空き地で履き替えようとしていると、どうもその空き地が駐車スペースだったらしく「どいてくれ」と促される。チャンスだ。
 すかさず駐車した軽4からおりてきたおじさんにおじさんがモノを尋ねるというシチュエーション。
「こんにちは、どォうもすいません」
 友人の会社の新人教育では「オマエの頭は何のためにある?」という問いに「使うためにある」と答えるとブブーだ。「下げるためにあるんだで(接続する尾語は方言)」 まづ頭を下げる、これは基本である。
 このとき勿論、地とも言われる営業スマイルを忘れては逝けない。
 当初バイクと言う事もあり、この手のファーストコンタクトには少なからず緊張があったが、相手の
「ここ登んのかい?」の一言が思った以上に優しい響きだったので、ここは一発確信に迫る「登れますか?」
と“実際に言ってみた。”
「いやぁ、ここはだめだぁ〜。バイクならあっちの方から登りなぁ」
よし!商談成立!
 かくして30分程の現地聞き取り調査が行われ、既存の知識との整合性が計られた。加えてさっきの
「あっちから登りな」というルートはかつてバイクなど走らなかった場所から進入されており、そっちはホントに山道というかハイキングコースオンリーなので、むしろ問題ではないかと思うので今回のらポートからは控えさせて頂く事とする。
 最後にもう一度「有難うございました」と頭を下げて現場を上がってゆく。時計は既に3時半を回っていた。 

今回のルートはTouringMapple2005.3版に点線表記(一部表記なし)

当日は山火事(ぼや)があったので消防署の見聞があった。


車の跡は恐らく消防関係者。ここしかUターン出来ないモノね。この跡地元の方との対談がある。


既にどなたかが堕ちていた画面右手のV字溝。


泥濘とはいえバイクは何とか前進可能。
いまんとこは・・?



すでにV字溝は深さ2〜30センチに達した状態・・?見た目より泥が深く体積している。
釜房林道旧道以来のヒットだな。

でも、ある程度はやっぱ溝落ちしちゃいますね。ジムニー未踏のタスクをクリア。



 まずは先にジムニーで走ったルートをなぞると最初のV字溝にタイヤを落とした跡があり、既に雪解けを狙った輩が存在したことを如実に物語る。
 当日は雪解けもあって実に滑りやすく、正直休憩で支えた足ごとバイクをひっくり返すとほどの泥濘地帯。4分山のリヤタイヤには少々荷が重すぎたかも知れない。

 V字溝と平行してコーナーを曲がると、恐らくこの溝を造ることに多大な貢献をしたであろう賽の河原と化した林道は、雪解けの腐葉土を孕んで行く手を阻む。本来なら道隣の沢に流れるべき水は管理者が処置を施さない故に大量の落ち葉とともに道路にあふれ出し、それによって出来た堤が本来流れ出すべき部分を塞いで道路北側から流れ落ちる大量の雪解け水を道路に押し戻すという悪循環は、道路をすり鉢のように削り出し、路面中央に見事な一筆書きの水路を造りだしていた。
 この溝に二輪車のタイヤが填り込み、脱出の際に更に路面を掘ってしまうことがいわゆるバイクによる林道荒らしの発端となっている。
しかし正直なところ、レース場じゃないんだから時折トレッキングだけで走るバイクで溝の深さが決定されることは断じてないだろうと思われる状況だ。
ここで定期的にエンデューロ大会でもしているなら話は別だが、そんな訳はないだろう?。
 ジムニーが挫折した場所から先は未知の区間である。先ほどの話から常軌を逸したこの荒れた部分は約300m程、林道全長の約15%の部分である。
 周りが雑木林から植林の杉林に差し掛かる頃、道幅一杯の荒れた路面はすり鉢状に一本化され、イヤが応にもルート選択の余地がなくなる。しかも溝には長年にわたって道路に取り込まれてしまった倒木があり、これがまた見事ステップの位置に突き出ていて前進を阻むのだ。全身に熱を帯びてウエアの外に放出される湿気が、日の暮れかかった薄暗い杉林にまるでオーラの様に気温差で浮かび上がり、思わず
「アタァ!」とか叫んでみたりする。すでにバイクには乗っておらず、
「アタァ!」の掛け声と共にひたすら押している状況だ。


道幅は無いに等しい、まさに一本道・・・?。


泥濘と大量の落葉のため、溝から脱出できない。


しかも溝には豪華倒木入り。



しかし、ここを越えればという所で物語は突然最終回を迎えることとなる。
「倒木だ」


まさにこの瞬間、暗くなった林道に叫び声がこだました。
「オワタァ〜〜!」(終わった。の意)


乾燥路面に見えるけど実は泥濘。倒木もここに落ちて半年や一年じゃなさそうだ。


他に進路を塞いでいた倒木も撤去されている。
どなたの仕業かしら?。


 三度目の真実。
5

 
流石にあの倒木は切れない。
 つーか、当日はまさか鋸なんて持ってない、休日出勤とはいえ会社帰りだもの。名目林道とはいえハイキングコースにも指定されたルートで独断で木を切るのはあまりに常識がないだろう。
 ちなみに倒木は太さ35cm程度、北側の雑木林の斜面から南側の造林杉林に倒れ込んでいるが、林道にほぼ直角に交わっており、見た目遮断機閉鎖状態である。
 しかも、根本から根こそぎ揚がっているので、かかる重量はとんでも無く重いだろう。路面からの高さは凡そ70cm程度で、トレッキングで跨ぐにしても中央突破は難しい高さ、しかも路面は豪華すり鉢状の泥濘地だ。


切られたのは別口でこの前塞いでたのはこの木かも・・?

 従って再チャレンジの際は木を吊り上げるべくロープ・滑車・ハンドウインチを持参して来てみた。
すると、多くの足跡と共に既に倒木が分断され、路面状況はクリアな状態であった。
「たすかった〜」



高さに合わせて斜めに写真4枚を繋ぐ。

 解っていれば重いジャッキなんて持ち歩かずに済んだのだが、はたして営林署の方が伐採撤去したのだろうか?この後3箇所ほど、このように処理されたところがあったが
その仕業が地元の有志か市職員か
は不明である。




 さらに荒れた感のある路面状況だが、
ここ数日は天候も良く日当たりの多い所も増え、
ここまで登る労力も前回から3割程度は軽減された
だろうか?というほど速く着くことが出来た。




春日神社(来た道)と弁天山のY字路。
弁天山ルートが信夫細道の本道と思われる。

ここが南大館?私道との合流があるが・・?。


夕方とはいえトレッキングする人もいる。

 さて、未知の領域を先へと再度前進を開始する。いくらか北寄りに東進してきたルートがここでいきなり南に転進し十万劫に向かってゆく。正確にはクランク状なのでもう一度東に進路を変える訳だが、ここを最後にあの中央轍は無くなってしまい、路面状況も十分人が歩ける状況になる。
ただ、道路真ん中に 落石があり、いずれにしても軽四の進入は不可である。


古道、信夫細道の本道に合流?

 
クランクを東に曲がると南側から合流する遊歩道があり、初めて遊歩道の案内板が姿を現す。大体トレッキングコースと銘打っておいて林道入口の標柱は市が建てた物ではなく福島ライオンズクラブの寄贈品という辺りが良く解らない。
 この日は良く晴れた終日ということもあって訪れた林道は落ち着いた雰囲気を醸し出しており、リヤカーに山菜を積んだ地元の方やトレッキングで散策する方などを見かけたが、いずれも会釈を軽く返して頂く程にフレンドリーであった。



私道合流点には広大な空き地がある。しかも多数の罠(トラップ?)が仕掛けてあるという・・?


緑の丸に括られるのが土地杭。興醒めだなあ。


 
もうひとつ小さなクランクを過ぎると何やら花見山の方角に空の開ける空間がある。これは・・?
そう、昭和50年代に住宅整備?された名残りである。その広さざっと千坪以上だろうか?建て売り住宅が5〜6軒は
建つ空き地に、伝説の地には不釣り合いな「私有地立入禁止」の標識がある。良く見ると、看板はこの林道の接続点に向いていて、地図を見ると確かに道が1本この林道に接続している事を示している。


ここにも撤去跡がある。しかし凄い構図だ・・?


南大館を過ぎると路面状況は良くなる。って、深い泥濘がなくなるだけで相変わらず滑る。



 うっすらと色づいた里の梅の木を望みながら「どうしてこんな所に開発許可が下りたのだろう?」と思う。
 丁度花見山の裏隣りにあり、ハイカー以外は寄り付かない場所だ。かつては地図宜しく車での通過が可能であったが、部落からの入口の沢沿いで道路が落ちてしまい、現在は通行が出来ないはずだ。林道の通路側にある看板にはイノシシ用の罠が仕掛けてあるので入るなという但し書き迄書き込まれている事から、これは一種の地雷源と考えて良いだろう。
 
花見山への山道分岐点。勿論バイクでは入れません。手前から高圧線の案内標識も建つ。

 
花見山の裏にある地雷原!こう書くと桜の香りと共に何やら危険なニオイもしてしまう。
 地雷原の敷地境界にはそれを示す地杭が打ち込まれているが、それがやたらとある。どういう筆入れをしているのかは謎である。
 地雷原を通過するとまた倒木の撤去跡があり、南に曲がって東に戻るクランク状の道が、相変わらずの急角度で登っている。いくらかぬかるむ部分があるとはいえ、登り口の300mから比べたら楽勝だ。

溝が消えたとはいえ、滑りやすい事に変わりはない。

 勿論お約束の落石もあり、これがジムニーで来ても跨ぐも避けるも難しい位置と大きさで通行を阻んでいる。
このクランクを登り切ると、福島市南東を望む見通しの良い場所に出る。高圧線鉄塔があり、その方向に向かって南に降りる脇道がある。この道は案内標識はなく繋がっているかは解らない。が、足下にはそれまで確認できなかったカブの足跡がある。
 林道はまた雑木林の中に入ってゆくがこの先は尾根伝いのルートとなり、林の間から福島市内や信夫山、吾妻連峰が見えるようになる。丁度隣の山に移る感じで、道は平坦な部分ときつい登りを繰り返して標高を上げてゆく。


ここからカブの足跡がある。


尾根づたいに花見山に抜ける山道がある。


ここは昨年あたりに木を切った様だ。
軽トラの足跡がある。


同じ軽トラでも赤帽の車なら確実に松の木にヒットするだろう。


根っこに乗り上げると左右の高さは20センチを越える。谷に車が傾くのは怖いだろう?。



正面、標識と重なる道が本道。画面右手に雑木林になりつつある下りルートがある。
因みにこの写真を撮ってる位置にも山道がある。


 まあ、きついといっても路面状況は落ち葉以外比較的良好なので問題はない。やがて道路左手、南西に分かれる山道と花見山を示す標識に出会う。これが隣り山ともいえる花見山に向かう遊歩道である。切り通しのようなルートを越え、さらに登ってゆく。馬の背のような尾根上がりの為、左右に山のない区間は都合3箇所あり上の二つは特に急である。
 ここがかつて入口区間に代表されたすり鉢状の路面とセンターに溝を持つルートでバイクでの十万劫越えのハイライトともいえる区間だった。ところが今回相変わらずの滑る路面ながらすり鉢状ではなく、センターの溝も殆ど埋まってしまったことが判明。落ち葉に埋まらない木の根がらみの土くれに軽トラの進入痕跡があり、営林関係者もしくは地元の方が山仕事で現在も使われている様子だ。


そして!約束の土地へ到着。

 
この二つの登り区間の間に、判別不明の標識が建つ直角コーナーがある。東に登ってきたルートが、突然左への直角コーナーとなっていてその右手に標識があるのだが、その標識の左右にも山道がある。本道とも言える登り左コーナーの奥に更に下ってゆく道がある訳だが、見る限り踏み足の跡もなく、あまり使われていないようだ。
標高400mたらずの十万劫山ではあるが、ここまで登ってくると周りの山を越えて、景色も変わってくる。最終ステージも平坦となっていて難なくクリア、山頂に踊り出る。
 2ヶ月ぶりに祠の前で手を合わせる。夕暮れの太陽が吾妻連山に身を沈める間しばしくつろぎ、家路に向かうこととした。
 尚、余談ではあるが祠には十万劫ゲージがあって軽自動車以外の通行を途絶させているが、今回雪解けに来てみると、裏にある空き地が普通車の回転場なっている事が判明。よくよくみると山頂東南側は営林署が伐採作業をしたようで、この回転場は普通トラックによる重機上げに使われた様子である。
 十万劫林道は遊歩道指定と言えども、いまだ林道として生きている部分もあるのだった。

●林道十万号線(仮称)
区間延長:3.5Km
(全線未舗装/ライオンズ標柱表記区間)
接続区間:1.4Km
(全線未舗装/山の入坂山から天徳寺交差点まで)

調査日(05/12/24~06/3/20)の状況:素直に他の林道を走った方が身の為です。

先ほどの伐採区間に車で出入りしているため、ダブルトラックが続く。真ん中に溝はない。。


唐突に転がる石を避けると腐葉土に隠された泥で、車体は簡単に横を向いてしまう。



やはり溝のないのぼりの雑木林に、
夕暮れ迫る・・・。



そしてついに尾根に・・・。



吾妻連峰に沈む夕日を眺めつつ・・・?十万劫山、制圧。


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