●モーニングムーン
 唐突に起きると、携帯の時計は朝5時を指していたが、何時ごろ寝たのか全く記憶がない。
 少なくともおぉじぃ氏の帰宅メールは気づいていない。

 そそくさと用意をして、バイクを押して歩く。木賊側沿いに深い霧が出て月がぼんやりと輝いている。シルクバレーの出入口はそこそこの登り勾配だ、止む無くエンジンを懸けて静かに県道に躍り出る。が本人が思う程静かとは言い難く、スパトラの排気音が霧の中に響く。

 紅葉の時季に川縁の温泉に早朝入りに行く、というのはMRの旅の基本というより原点に近い。

秋の南会津"紅葉" Tour
〜2011"SouthAIZU"DoubleTour! Round2-Autumn 04〜


 季節は異なるがカムイワッカの滝風呂もオンネトーもこれで制圧したMRに、泊まりの林道と朝風呂は欠かせないのだ。

Photo Album


夜明け寸前の露天岩風呂に、囁く様にせせらぎが響く。
電球色の照明が、一層のひなびた温泉イメージを高めている。


朝6時を過ぎる頃、露天風呂はほぼ満員と成る。
近くの旅館に宿泊する人も、朝食前に入浴に来るのだ。


ゆったりと簡素な朝食。聞き慣れ親しんだチャンバーの吹奏楽。
「@廃道撃墜王、到着!!」


 と言うよりこの瞬間だけは朝風呂が林道より大事だ。イオン飲料片手にまだ薄暗い階段を下りてゆく。
 前回の来訪が2001年と言うから軽く10年が流れてしまった。
「ふ〜〜〜〜ぅぅ」
 それでも、まるで変わりのないかの様に川縁露天風呂は生きていた。
温泉に入りながら夜明けを待つ。
 色付き始めた紅葉が、墨絵の世界に文字通りの色を添えている。

●飛人(ヒト)、来襲
 露天ファンの熱き胸を鷲掴みする木賊温泉に酔いつつキャンプ場に戻ると、既に出発する人も居る様だ。三連休の最終日、誰しも午後からは家路を急ぐ往路であろう。
だが、MRの携帯に届いたメールは
「これから出ます」
「トラブルで参加不能」の二通。
先は熊五郎氏、後はKimi氏である。
kimi氏のDT125Rが白河でチューブ破断、参加断念となる。
"パパァン!!"


昨日も来訪した唐沢林道。
好きなんですよ、この道。


「プワアァァアアン〜〜!
ンパッ!」

峠の朝と言えば、やはりこの音。



「バゴアァ!!ッバァア!!」品が無いよナ、スパトラの排気音は。


「DTMに標準装備」それは泥濘。また今日も真っ先に埋没する(爆!


「8時には来るかな?」の予想通りにヤマハ2stサウンドがキャンプ場内に響き、その音色に幾人かのライダーが懐かしそうに目を細める。しかし目前を通り抜けた足下で視線がクギ付けとなる。
 DT200改に虎タイヤ、サイドカウルに制圧した旧国道のおにぎりマークが"ユーヤ フブーキ"のロータスのボンネットの如く貼られている。
「@廃道撃墜王、到着」
 本人に気づかれ無い様にコーヒーを呑みながらツブやくMR。なんせ栗子隧道山形側崩落地点に轍を刻んだのは今の所彼だけだ。
「おはようございまーす」
 そのにこやかな表情が、逆に彼の職場の過密スケジュールを映し出す真実の鏡の様だ。今日遊びに出た事が、余程嬉しいに相違ない。
 早速のルート会議の結果、古町温泉から戸板峠(多々石林道?)をまず攻める事で直ぐに話が決まる。
 MRはテントの片付けを手伝って貰って荷物満載で林道を往く何時のもスタイルで出発。

 
「一本足慣らししますか」と今日もトップランは唐沢林道、後ろから見ていてもウキウキの熊五郎氏は舗装が切れた瞬間に脱兎の如く加速してゆく。


MRが埋没する頃、熊五郎さんはサミット通過。


そのすぐ先に旧道の標柱が在る。


「旧唐沢峠」矢印の所からいきなりケモノ道で葛折れになる。


 
昨日撮影出来なかったMRは無理せず飛ばさず走り抜ける。勢いが無さ過ぎて例の泥コーナーでストールしかかるが、明らかに太くなったトルクが荷物満載の車体を押し上げてくれる。
 先行した熊五郎氏は、下りに至ってあの虎タイヤでまさに”飛ぶ”様(もしかして滑る様?)に走ってゆくDTが印象的である。

●緑資源機構の負債
 会津の峠に名を連ねる唐沢林道に続いて、昨日と同じく国道352/401経由で伊南村の古町温泉にゆく。
 丁度夏にNoryさんらが泊まった温泉宿のすぐ北側の信号のある交差点を、東の山に向かって右折、聖書Tマップルには「会津高原INAキャンピングビレッジ」のマークが在る。
 発売以来2年ごとに更新購入している聖書だ
が、01'4月第2版まで戸坂峠を東西に貫く林
道は「多々石林道」
と成って紹介されていた。
 戸坂峠を越えて駒止トンネルの上を抜けて北
側から合流するこの道は、03'以降林道オスス
メ指定を外され、道も何時しか実践から点線へ
と成る。
05'以降には唐突に戸坂峠の南側の尾根を越え
たかつえ高原GCに出る点線と町境に
「多々石
の文字が入る様になる。

 この道は以前、
林道日記23にてご紹介した訳だが、日記の通り来訪した04'から既に道路工事をしており、その後約2年ほど工事は進行し、現在の状態で一時打ち切られた様だ。
 そう、
悪名高い「緑資源機構」の大規模林道計画「大規模林道飯豊檜枝岐線の会津若松〜新鶴〜館岩工区」の一部である。
 7年前と全く変わらない古町温泉からのアクセスルートはまさかの舗装/未舗装の位置関係もそのままに、ニコ改とDTを人影無い立派な高規格林道へ導いた。


現 唐沢トンネル。
トンネルは2分、旧道は8分くらい?。


舗装もダートも全くそのままのアプローチ?。写真は前回来訪時の為、工事看板が鈴也だ。
Pohto:04.10


ダート区間に至っては、前より痛んでいる。
Pohto:04.10



「未使用感漂う大規模林道」誰が使うんだよ、この道?
これこそ事業仕分けの対象だろう?営林業者だってロクに使ってないお!。



「なんだ?ここは」
 熊五郎氏も驚く清々しいまでの使用感の無さ、これから向かう多々石林道はまさにこの大規模林道が新道となる林道なのだ。
 早速登ってみると、やはり新道は途中から6m幅が3mに絞られ、2段のヘアピンの上で唐突に道は終わっていた。人が生活した趣も、野生動物が闊歩した形跡も無い。
 
自然を破壊しただけで、誰にもその恩恵がないまま(天下り官僚にはあるのか?)、いきなりに終わっている。


丁度正面の鞍部が戸板峠か?



終点地点まで上がってみる。
つーか、
道路の必要性を感じないぞ。


「矢張りあそこですね」
「ええ、間違い無い」
 二人が目を付けたのは道路幅が半分に成るヘアピンの脇道だ。実際の多々石峠は振り向いた南東側にあるはずなのに、この林道は名前の割に見向きもせずに真っ直ぐ北に向かってヘアピンを積み重ねる線形だ。

 飛び込んだ枝道の様な本道は幅2mそこそこの荒れた古道。車1台がやっと幅の崖もある荒れた林道を登ってゆく。見上げると昨日と違ってここは紅葉が綺麗だ。
 またしてもニコ改のフケが変わる、どうやら標高は千mに届いた様だ。山の北斜面をつづら折れに登り上げると、その先の切り通しの末端で先行したDTが停車している。
「戸板峠の標識と・・・」
 
熊五郎氏の視線の先には、初めて見る枝道がさらなる高みを目指してゲートを開けていた。


まさに
「ブッツリと」終わってる
大規模林道末端部。
最早潔さすら感じる。


ここか?→。というか、ココしか無い?。






なかなかにキツいわ。








そう、この鮮やかな色合いこそ秋!「日本の林道」の風景だ。


●稜線にて
 見ると彼のDTに変なリアフェンダーが・・?
「ああ、何かDT200の左ゼッケンプレートが落ちてました。戦利品ですね」
とニッコリ。何だか宝くじより当選確率高くねぇでスか?
TTRのハーネス落ちてないかな?
一通り撮影すると熊五郎氏と目が合った。
「逝きますか?」
「勿論」微笑みと共に、彼の操るDTのチャンバーが再び吹奏を始める。


パーツ!ゲッチュだぜ!。
 

戸板峠。正面が多々石林道。熊五郎氏の指す先には・・・。


戸板峠の営林管理看板!そろそろお休みという感じだな?こりゃ。



もう、目前に他の山が無い。
開きっぱなしのゲートを抜けて、紅葉に囲まれた道は最近下草を刈って美しい装いを倍加させている。。

雲一つ無い青空に、ヤマハサウンドが遠く近く響き渡る。



左手に初めて見る林道入口!大規模林道 先進道路?


 下の舗装路と違って熊の糞が散見する生きた尾根沿いの林道を撮影しつつ走り抜ける。



 青空に一際冴える紅色、発光していると見まごうばかりの黄色、優しく落ち着いた緑が織り成す錦の色合いに、しばし酔う。
 そして約2Km程でまた唐突に土場があって、道は終了していた。


当然、行ける所まで行く。
ワクワク。



スカイラインなのか!



素晴らしい。何だかデジカメの色が"鮮やか過ぎ"の気がする。


こいつぁアタリだぜ!。誰かがちゃんと下草刈りしている。


 頂上の三角点か?と熊五郎氏と探したが、それらしい物は無い。それでも間違い無く頂上と言うべき尾根端だ。
 北側に下る道があったが、本当に使われてない伐採道らしく、凄まじいばかの"激"薮だった。ここからは何処にも抜けられない、それでも二人は虹色の乱舞に満足していた。
 今年一番の紅葉ツアーである。

 来た時の1/3の時間で戸坂峠に戻った二人はいよいよ下りに入った。はたしてキャンプ用品満載のニコ改で、逝けるだろうか?



空の青が強すぎか?このデジカメ?。


終点!熊五郎さんのブログでここの位置のログ情報が確認出来る。




『うん、こんな感じだった。』
多々石林道はその頂上に広い土場?があるのだ。

 スロットルに現れる"しゃくりの様な息吐き"は、幸い回転の中盤辺りで、ロー/セコ/サードで軽くスロットルを煽る程度で回さなければ普通に走れるニコ改。トルクの厚さがクロウリング走行で深化を見せる。

 (仮)戸板林道と違って、管理者がほぼ放置プレイの多々石林道は薮もあるガレ場という印象、ここ数年は荒れるに任せた洗掘路面が一部の熱狂的廃林道マニアに受けていたが、一昨年に崖崩れで通行が途絶、それでも行政側は寛大で特に通行止めの措置がなかった。
 そんな事を思い出していると、唐突に熊五郎氏の動きが活発化する。
「洗掘区間だ」
 それはまさに
「天然の沢」



紅葉も良い感じになってきた。
道は・・・ほぼ河原?。


石がデカい!あのう、これ岩盤ですよねぇ・・・?


山の北斜面に青空に一際鮮やかな白い間道が続いている。
「こんな道ばっかだな」


 DTもニコ改も、ロックステージは双方とも効くタイヤ、たちまち虎仕様の熊五郎氏の姿が消える。


殆ど浮き石ばかりの路面。
ここは河原か?


ほぼ、流されてます。


補修の跡?がある。これでもかなりまだ甘い。




枯れ沢状態・・・?こりゃひでーな。

 MRは荷物満載のままスタンディングで切り抜けようとするが、想像以上に浮き石がデカく多い。重さも手伝って厳しい展開が続く。

 二日間通して初めての転倒は殆ど立ちゴケ状態。装備満載のまま自力で起こすには血管が切れるかと思う程の怪力を要求された。
 それでも、ガレ場故の足場のグリップの良さに助けられバイクを起こす。
 だ〜〜っっ熱い!
 
ヘルメットとジャケット、その下の防寒チョッキを脱ぐ。やっと起こしたニコ改を撮影すると、心配した熊五郎氏が戻って来た。
「大丈夫、ゆっくり逝くからサ」



どうにか枯れ沢区間を脱出!
しかし・・・?。


路盤崩落。まあ、2〜3日で3ヶ月分も雨量があれば、逝くワ?


転落厳禁。谷と紅葉の先に、これから通る道もある。


 つーか、早く走れないって、こんな河原。
 ようやく巨大クレパスと共に洗掘区間を過ぎると、道は1mそこそこの完全廃道となる。
 道幅はあるものの、機能しているのはシングルトラック一本のみだ。

「流石、昔の人は地形を見るのが巧い」
 雪国会津でいかに長く
”道の日照時間を稼ぐか?”この線形はその計算が実に巧い作りだ。
 加えて地質も良好なのだろう?これだけ放置されても、まだ道幅自体は確保している。


これで終わりか・・・?。


そんな訳はない。一番新しい土石流?ひとたまりも無いな。


 駒止峠の旧道といい、設計者の意匠が感じ取れる良い道だ。
2連のジャンプを越えて、いよいよ林道も終盤・・・何処かで見た事あるぞ?
そう、このふたコブこそ、ネット動画でみた崖崩れの現場だったのである。
 台風12号で更なる土石流に晒された結果、ほぼ道が埋まり、まるでブルで均した感じだ。ここで再び熊五郎氏が戻って来た。



「隊長、通り抜けちゃいました」
「はい〜?」
 もう一つの土石流現場を突破すると、見覚えのある小高い丘が見えて来た。
 7月にS氏と見た、あの工事末端部だ。二人は、多々石を突破した。

●タイムアウト
 針入の部落で郵便局にほど近い民宿で、夢の様な二日連続の豪華ランチを味わう。


道路は川、当然路肩も逝ってる。
ざっと両手ぐらい?


最終の登りを来る!。



お疲れ様でした。無事通過できました、よくまあ、あの荷物で。



豪華ご褒美ランチ。岩魚が美味しい・・・

 昨晩早朝のカンズメとレトルトパウチの食事が嘘のようである。食事をしながら午後の予定を打合せ。
 七ケ岳の未通林道を確認して、最後は大窪から田島に出て解散と言う事に成った。時間があったら・・・とあれこれ欲が出てしまう。
 ところが午後に入りMRが不調、古桧峠林道の入口を間違ってしまう。
(因みに初めての逆走)

 
箕沢林道の入口を教えた際に位置関係を取り違えた。当初の予定でもあった久戸沢林道は長さこそあるがその半分が舗装の林道でおもった程ではない。そして、再び針入部落を旧道から玉川林道に入り、何時のも様に霊水経由で大窪林道に向かう頃には、左手が痺れてハンドルの握り感覚が喪失していた。
 寄る年並には勝てない様だな<俺。
 また熊五郎氏のDTはエンプ!ザックから1Lの予備燃料を給油し、近くのスタンドに行かねばならない事態となる。
 時計が3時を過ぎた事も有り、ここで林道は終了してそのままR400を田島に降りて解散という事に。木賊平林道の解明が悔やまれてならない(爆。
「じゃ、お疲れさまでした」
「お互い帰りは気を付けて」
「また、何処かの廃道で」

 スタンドを出ると湯西川温泉までランデブー、クラクションを響かせて、それぞれの家路を急いだ。

●エピローグ
 終わって一段落すると、色々と見えて来た所で、今回の秋の2Day'sの当初目標と照らし合わせてみる。

1)箕沢林道(黒森林道?)の通過。
 2回とも断念した林道の通過(遡上)計画。
 後日、おぉじぃ師の情報から間の9月にさる
グループが遡上に成功!?していた事が解り、一


久戸沢林道も確認できた。
林道としては今イチ君?


界峠東区間。今回も見る事叶わず。


お馴染み冷湖の霊水。


部で騒然と成る。
 台風12号の前なので、MRらが後で逝った時より条件は良かったのかもしれない。
また、目撃した区間が最も激しく荒れている事も解った。


大窪林道から国道400号線を俯瞰する。

2)多々石林道(戸坂峠)の通過。
 荷物満載ながら通過、熊五郎氏曰く「登りも問題無い」という。MRもそう思う。

3)残った時間とその時点の参加者の意向に合わせた林道Tour。
 南会津は遠い、とは言えその魔素の濃さは十二分にご理解頂けた事は収穫であると思う。
 古くからMRが推奨する林道の距離、種類、濃度ともにバラエティに富み、加えて食事、酒、
温泉、紅葉と五感で味わえる旬がここには凝縮されているとお判り頂けた事だろう。
 また、新たに見付けたり教えられた道もあり、相変わらず新たな発見が多い所であった。

4)久戸沢林道の通過。
 問題無い、まあショートカットに使える?程度の林道だった。とにかく通過桶!



橋を覗き込むMR。




多々石林道旧道に架かる古いPC橋の上で記念撮影。




〜2011"SouthAIZU"DoubleTour! Round2-Autumn 04〜
END
Round1-Summer 01
2011夏の南会津Tout!
Round1-Summer 02
2011夏の南会津Tout!
Round2-Autumn 03
2011秋の紅葉Tout!
Round2-Autumn 04
2011秋の紅葉Tout!