温泉ツーリングスポット


大平温泉 露天風呂


(山形県)



ながいなが〜い登山道の様なつづら折れの山道を下ること15分・・
「やっと、見えた・・・」でもここからまだ遠い温泉。



山形県道232号線「板谷米沢停車場線」と言えば解りやすいか?
板谷から白布に向かうエスケープルートとなる県道151号線に関根の踏切から乗り換える

途中にある李山町内の、酒屋さん(大平温泉のオーナー)の交差点が入口だ。


道幅7mの道路を南下。左が関根赤崩地区、
写真左奥に米沢変電所が見える。
大平地区へは道成右へ



やたらに長い直線も最上川の源流の一つ、横川に
当たって折れ曲がる。大平地区はこの先だ。



大平地区の公民館を過ぎると、らしい道になってゆく。


 
交差点の角、民家の裏にぽつんと建つ温泉の案内看板。

大平温泉(滝見屋旅館)
 白布温泉で有名な天元台と言えばスキーフリークには聞こえのある山形屈指のスキー場であるが、MRの様な林道温泉ライダーには白布温泉の奥にある「新高湯温泉」の方が通りがいい。
 しかし、実は天元台の裏とも言える場所にひっそりと沸く露天風呂が存在する。山形・福島に跨る温泉といえば、姥湯温泉という全国区に名を連ねる温泉がある。


要所に温泉の案内看板がある。大平地区の看板には「車で30分・徒歩で13分」とあるが、本当か?
 



いよいい本格的?な林道に突入?距離だけなら確かに遠い。 看板通り右折。


世紀末に始めて来た時にはこの辺からダートだったよなぁ・・・。


ここもY字路風だが舗装された右に進む

しかし、完全舗装化されたアクセスルートには既に秘湯の雰囲気はまるで無い!と、この際断言しよう。
 スイッチバックも解らずに切り返しの真ん中で立ち往生するクラウンどもと決別し、真に漢の露天を目指すのなら、ここは矢張り世俗化した温泉をブッた切り、長く苦しい旅路の果てに、光輝く湯船(何故湯船?)を探し出し、この身を沈めなければならない。
「なんちて」
 
実はこの温泉は再訪である。
上記の理由で初めて訪れたのは世紀末の98年、新緑の季節であった。
同行は当時KDX250のT2氏である。

 「漢の温泉」かどうかはさておき、大平温泉へのアプローチは確かに遠いと感じる。
 県道から約20分掛けて愛機ジムニーはやっとらしい雰囲気の林道に突入するが、目前には延々といまだ舗装林道が横たわっている。看板にはさらに30分と書かれ、実質県道出発から温泉まで1時間は間違いなさそうだ。



すさまじい経線で山肌を登り始める温泉への林道。
木漏れ日の合間の崖のような路肩から米沢市内が遠望出来る。



やっと舗装路が終わる。
え?10年で2Kmしか舗装が進んでないのか?



木陰が薄い・・・周りに山がない


 先に申し述べておくが移動スピードは当地の法定速度を遙かに超越するスピードであるにもかかわらず、温泉どころか目の前には山しかない。
「ねえ〜、秘湯まだぁ?」
 流石にアキた我が子が、本日3度目の質問を繰り出す。私事で恐縮だが、沼尻源泉に連れて行って以来
「秘湯とはスコップを持ってって掘る温泉」
という間違えた認識を持ってしまった様だ。
「いやいや、今日は普通の温泉なんだよ」と言いながら、
「秘湯とはスコップを持ってって掘る温泉」・・・
確かに!! 
とその誤認識を何処かで支持して居る自分も確かに居た(笑w

 やっとつづら折れが始まり林道が標高を上げ始めると、今度は凄まじい経線で峠へと間合いを詰めてゆく。
 直ぐに舗装も途切れ、荒れたダート路面がやっと秘湯に向かっている雰囲気を振動と共に後押ししてくれる。
 崖のようなガードレールのない道ばたから北側には、遠く米沢の町並みを遠望出来る。
 登る毎に、道の体はさらに伐採道のような狭さや荒れが目立つようになるが、それ以上にファインダー越しの風景に、徐々に青空が比重を占めてゆく。



「頂上か?」なんてゆーか・・
「温泉レポなのにまるで林道レポみたいに道の写真ばっかり!!」




まさに下る直前にサラリと案内が・・・?

そして、森が途切れる・・・・
「頂上だ!!
 (いや峠の間違いだろ>俺)」 
 前に来たときは全く眼中に無かったが、この峠部分が実は第一駐車場であった。ここには重大な情報を秘めた案内板が建っていた。

P1〜P2=120m
P2〜3(荷物用索道ホーム)=240m
   *普通自動車はここが終点
3〜4車道限回転場(軽のみ)=460m
4~5吊り橋=100m
温泉から3の索道ホーム(手荷物受け取り所)まで560m
P2から温泉まで800m




800mは第二駐車場からの距離。表記には無いが、この第一駐車場からは920mもある。


いつもより多めに下っています(笑


荷物用索道のホームがある。
もはやホームと言うより「土場」



P1(第1駐車場、つまりこの峠)から温泉までは・・920m?!しかも、何げに・・・
「書いてねぇし!」
そして峠で在る故に林道は谷底の温泉に向かって猛然と降下を開始した。
 それは
ホントに急降下である。場所によっては20%位あるだろう。2速のエンブレが効かないのは珍しい。愛機ジムニーはまさに「転がる様に」下ってゆく。
 あの地図はかなり正確で、第二駐車を通り過ぎて荷揚げ場所の手前の空き地にジムニーを入れた。


姥湯温泉でも見られた「索道による手荷物搬入」峻険な立地条件ならではの装備です。

 荷揚げ所で回頭、コイツの最小回転半径では一回で廻ず、段差で簡単なステアケースに陥りつつ廻る。
 何とか駐車出来た物の、その角度は車のサイドブレーキでは不安だ。近くにあった石をタイヤに噛ませ、車体に念入りに噛み込ませる。
 角度の為、ドアを開けるのが億劫だ。問答無用の自動ドア化していた。

 ここから歩きだが改めて一言・・
「ここから徒歩で560mもある」
 別に、平地の0.56Kmならいいのよ。写真を見ていただければ解るが、殆ど登山道の傾斜である。コンクリート舗装が歩きやすそうで実はカナ〜リ辛いのだ。
 喜んでいるのは子供ばかり、親は帰りの苦行を予見する。(爆
 因みに階段の踊り場のような平地の先は、目も眩むばかりの断崖絶壁、よくもまあこんな所に道を造った物だ。

「これなんだ?」
子供が見つけたのは変な手摺りだ。良く見るとギアの歯のような物が一面に溶接されている。見回すと何本か散見出来るが、どうやら長さは同じ様だ。
「よく解らないけど、険しい山なんかで重い荷物を運ぶ列車のレールみたいなものかな・・・?」
 恐らく旅館建築の際に索道の他にも運搬設備があり、いわゆる工事用のモノレールみたいなものが在ったのだと思う。このレールはその末路なのでは?妄想が広がる。



と、言いつつ・・・・
子供が歩くスピードに付いてけない親がここに約1名(核爆!
いやマジ効いてますよぉ・・。

県道の交差点を左折して50分・・・きっと看板の時間を計った被験者は健康で健脚な方に違いない・・・
「つーか、帰りはもう登りたくないよ、俺ェ・・」



息子の身長が約1m、写真視点で約1.5m・・
なんだ?この急坂は?


変わった手摺りだな?と良く見ると?

スイッチバックだな?完全に。


「紅い屋根だ。おとーさん温泉だよ温泉!」
やっと旅館の屋根が見えてきたよ・・
ゼェゼェ・・・・。


複雑に組み合いながら加重を分散させてゆくワイヤー達・・。
「力学の小宇宙(コスモ)」を垣間見る・・・。
つーか、この軽虎達、流石だ。


きっと、これはメタボリック専用の秘湯に違いない。
(↑けぇ〜つろぉ〜〜ん♪)

 さて、450m+100mの最後には漸く川の流れが見通せる最上川の源流  沢と、沢にへばり付くような風情の滝見屋温泉が現れた。吊り橋の入口には
「一度に5人以上乗らないで下さい」という次の瞬間が想像出来そうな看板があった。
 嫌がうえにも背筋に冷たい物が走るが、実際二人程度は問題なく渡せるようである。

 さて、お待ちかねの露天風呂である。入口から一声掛けると早速旅館の方が現れ、大人500円の入浴料を払う。息子は半額だった。


チャリダーの方々はここまで下りて
来るとか・・?ブレーキ壊しそう。



これ、バイクで渡ってみたいな・・・

それはまるで、岩を取り込んだ松のように沢筋の壁に生えている温泉。、


 自分より一寸お年を召したご夫婦が湯上がりの清涼飲料を頂いていた。
 前に来たときと露天風呂の位置関係は同じだが、配置された脱衣所や植裁、腰掛け石などは相当配置が換わっている。付近は毎年3mを越える豪雪地帯。旅館の皆さんは毎年、雪あけの露天風呂や温泉配管の補修を行っているそうだ。
 修験僧によって発見され、開湯1100年を誇る同温泉も、日々積み重ねと弛まぬ努力によって今日まで支えられているのだ。


あ、かわい〜看板


玄関の左手、沢沿いに露天風呂がある。前より広い?


 
早速脱衣所で服を脱いで身体を洗い入浴。ああ、苦労が報われる一瞬・・。(つーか、帰るの明日にしたい・・)
 湯口ではわずかに硫化水素臭も感じられ、無色透明の岩風呂には白い湯の花舞い降りる。
 身体を南に向けると、正面には新緑を纏った険しい山並みを覗かせる天元台がそびえる。青空が眩しい・・・。
 露天が飽きると、掛け流しのお湯の出口から沢沿いにタオル一丁で下りて、冷たい沢水に足を沈める。もう子供は大はしゃぎだ。
 再び温泉に入り、「は、ふ〜〜」を楽しむ。やっぱ露天でしょう(笑w

 長々と、しかしささやかな至福の時間はあまりに少なく、風呂あがりの親子の前には、1時間半前に下ってきた激坂の舗装山道が立ち塞がるのだった。
しかも・・・。
「とーちゃん、ネムい・・
      
オンブして
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
「シ、死ぬ・・・(大泣

泉質/含石膏硝酸硫化水素泉
源泉温度/63℃前後
     (沢水により冷却)
効能/リューマチ、高血圧、皮膚病、便秘など。
11月〜翌年4月まで冬季閉鎖あり。


写真は少々南西に振って撮影


天元台に潜む名湯。苦労があるから極楽が分かる温泉。
それが大平温泉露天風呂だ。