温泉ツーリングスポット


姥湯温泉 露天風呂


(山形県)



山間の沢にへばりつく様に起つ姥湯温泉


道幅2mの吊り橋。砂防ダムの上に掛かる。

長く急な露天風呂への道
「思ぉいぃ込んだらぁ〜」。


脆い地盤と残雪に削られ、岩肌の露出する前川。


●米沢八湯に数えられる、
 深山幽玄の秘湯。
 山形県の最南端といえる米沢は南を福島と新潟に接し、中央分水嶺を含む深い山並みに囲まれる。
 その米沢市は福島県と県境を接する上杉家のかつての居城という城下町で、郊外には八つの温泉が湧く。
 白布・新高湯・大平(おおだいら)・姥湯(うばゆ)、滑川(なめかわ)・五色・湯ノ沢・小野川の八温泉を「米沢八湯」と呼ぶ。
 少し前までは、これに栗子・笠松鉱泉を加えて米沢十湯と呼称していた。
 個人的には白河ダム上流に在る広川原温泉も入れて「米沢九名湯」としたい所だ。

その中でも福島・米沢の県境「吾妻連峰」には個性的で情緒豊かな温泉が多く、何処に行こうか迷ってしまうほどだ。その板谷峠の秘湯といえば、よく聞かれるのがこの「姥湯温泉」枡形屋さんである。

 姥湯温泉は板谷の最南端、ほぼ県境に位置し目前に手が届く山を越えるとそこは福島県である。
 温泉の標高は実に千五百メートルもあり、湯舟から見える山には木も少なく、自然の厳しさと森林の限界点を会間見る事ができる。
 アクセスは5.2Kほどのえらく曲がりくねった姥湯林道を走り続ける。途中、待避所などで対向車をやり過ごし、秘湯としての名を高めた「スイッチバック」なる方法でさらに急に標高を上げてゆくと、突然の切り通しから小さく岩壁にへばり付く様な旅館と、豪快な吊り橋が見えてくる。
 私が初めてこの温泉に来たのはもう20年から前だ。当時は滑川温泉から上のルートはすべて未舗装で、時折土砂災害で通行出来なくなる険しいルートであった。



舛形屋さんは今年(05')改装工事?(河川工事?)中でした。


 それ故、一部の熱狂的Off-road派ライダーやドライバー達御用達ともいえる秘湯であり、今でこそ完全舗装95%であるが、砂利のスイッチバックで車が立ち往生し、旅館から助けが出ることもあったとお聞きしている。
 当時、勿論Off-roadバイクには極上のセクションが連続するが、北海道の温泉同様これでもかという未舗装路をロードバイクやアメリカン、はてはサイドカーまであのスイッチバックを一筆であがるのだからもの凄い。
 サイドカーは片輪あげて回るのがコツだとか??いまではすっかりいい舗装路になってますけどね。
 さて、そんな時代の名残り的ラスト5%の砂利道を下り、砂利の駐車場に着くと、ここから旅館・湯船までの約500mは沢沿いに徒歩の上り坂となる。

 訪れたのは5月中旬。遅い雪解けに駐車場脇の岩肌には氷河の様な残雪がまだ厚さ1mから残り、秘湯気分を盛り上げる。沢沿いに岩肌を見せる急な斜面は中国の水墨画の世界によくある山水画を連想させる。
 この雰囲気は、20年前と何ら変わる事はない。
 吊り橋を渡ろうとすると橋の左手にエンジン動力機と,なにやらワイヤーに吊された籠?がある。どうやらこれは物資を旅館に荷揚げるリフト(索道)のようだ。リフトの終点に目をやると、うむむ?何か形が変だ?
吊り橋を渡り、目を凝らしながら登ってゆくと、どうやら工事をしているようだ。旅館の増築と河川補修を同時に行っている様子である。
 いつの間にか外風呂を使う専用の番台が出来ていて、窓から声をかけて入浴料500円をお支払いする。窓際に掲げられた「ビール冷えています」の一言に釣られ、これも購入する。本来の旅館の脇を抜ける山道が工事で塞がれている為、沢の上に架かる仮設足場を歩く。

質素な露天風呂の脱衣所。しかし上の湯船にはない。


「山姥の湯」温泉分析表


薄い乳白色の温泉。






手すり付とは言えこれがなかなか怖い。なんか揺れるのは私の体重の所為?
 下を眺めると、まず見ることのない松川の源流である前川を高さ6mから眺める事が出来る。足場を抜け、仮設トイレの前に女性用外風呂なんかも出来ている。そうだよなあ、登山道から丸見えだもの。橋を渡ると目前に脱衣所が見える。しかもいつの間にか2つに増えている。夏場は芋洗い状態だものなぁ。来るなら早春か晩秋である。
 そんなわけで人が少ない内に入浴する。片手にカメラとビールを持って湯舟につかる。



乳白色の湯ノ花に包まれた温泉は、実に味わい深い。


源泉は沢の対岸の壁にある。


湯の花畑の箱を覗くと,わらに花がさいたかのよう。

 さらりと周りを見渡すと同じくカメラとビールを持つ人が4人ほど。ご友人を撮影したり、露天風呂のバックにそびえる山水画にとシャッターを落としているのだ。
「ううむ、秘湯気分が薄れるのうぅ〜」とお茶を飲む仕草でビールを飲む。あふぅー、うめえ。
 体に悪いのは重々承知で、30分ほど揚がって飲んで入ってを繰り返す。登山のご婦人方がチラチラと横目で湯舟を見つつ足早に登山道を駆け下りてゆく。ビールを飲み干しながら彼女達の来た道を目線で遡り、「あの辺かなぁ」と目安を付けると風呂から上がり、着替えて登山道を登る。
 
 撮影の為登る登山道は倒木や落石で状態が悪く危険であったが、想定通りの高さからファインダーをのぞき込むと、案の定同じ目線である。そうここはアウトライダー98年増刊「秘湯の旅」の表紙である写真を撮影した場所に違いない。(後から見るともうちょっと下だった)
 乳白色の風呂水が如何にも効きそうな色合いの二つの湯舟、そのすぐ側にある湯ノ花畑と急な沢。ロケーション通りだ。違うのは春先の為、氷河の様な残雪が写っている事か。



秘湯姥湯温泉。 カムイワッカの滝並に世俗化した温泉だが、確かに秘湯の香りは残っていたようだ。

 泉質:単純酸性硫黄泉 
 源泉温度:約52~57℃
 効能:慢性消化器病・神経痛・筋肉痛高血圧症など。
 内風呂:あり。
 入浴料:500円(大人、子供半額)


アウトライダー98年増刊「秘湯の旅」の表紙である写真を撮影した場所とオモワレ。



少々熱めなところが素敵である。初冬にスノーモービルで入りに来る方もいるとか?。