温泉ツーリングスポット


弥五島温泉「郷の湯」


(福島県)




思わずどっかの和食レストランと間違えそうな行灯看板。素敵だ。


見るからに宿泊施設がない。完全日帰り温泉だ。


 それは、正月に車で蕎麦を食べに行った帰りの事だった。
およそMRらしくないナビシートだったが、話の主導権があちらにあるので仕方ない。
そうして、折角遠くまで来たんだから風呂に入ろう!露天風呂が良い、と言う話になった。
 最も近い露天風呂と言えば、ここから10分程にある「湯野上温泉露天風呂」であるが・・・。
「車、登り降りできるのかよ?」
 そう、レポートを見て頂ければ判るが、河原の露天風呂まで降りる道は、普通車の車幅が一杯の車幅しかない。加えて途中のヘアピンは軽ジムニーすら切り返す程の狭さだ。
(因みにジムニーは回転半径4,2mと割とデカいです)
 更に言及するなら、路肩には30センチを越える雪・・・除雪されているかも怪しい。
「十中八九、無理ポそうだな?」
「旅館の内風呂かなぁ」

聖書TouringMaplを開くと、塔のへつり、弥五島の駅近くに温泉があるようだ。
「ん〜〜?あったっけ?温泉なんて?」
「知らないですねぇ」
「大体、最近下郷なんて甲子林道からしか来てないし(核爆」
「MRさん、それ普通の人は通んねぇから(笑w」



いいねえ。
ありがちながらもポイントを外さない木製看板。
下にぶら下がっているのは温泉認定書だが。
いいのか?それで?。


説明不要ののれんが俺を呼ぶぜ。


こぢんまりした脱衣所。↓

「ええ!?良い道だよ、あそこ」
「どこがじゃ!」
「賀曽利さんもそう言っているし」
「その情報で、ロードバイク乗りが何人犠牲になったコトか?」
「この温泉もそのマークが付いてるぜ」
「マジですか・・・」
 
そうして偶然訪れたのが
「弥五島温泉 郷の湯」である。

 地図では国道を挟んで駅の直ぐ前にあり、容易にその大きな提灯の看板が確認出来る。
 駐車場は20台ちょっとの大きさ、建物も真新しく、最近新築と直ぐ判る。前は温泉旅館だったのかもしれないが、現在は日帰り温泉のみと割り切った営業方針だ。
 何と夜10時迄営業している、これは湯野上温泉露天風呂のEscapeになるやもしれん。
早速入ってみよう。
 下駄箱と脱ぎ位置の関係が今ひとつだが広い入り口とその左手に管理人室兼受付、その後ろは休憩室に面してカウンターがあり、ドリンクを提供している。しかし何故か開放的な正面フロアの右手奥に小さな土産物売り場がある。つーか、売店を管理人室と離してどうする?おばちゃん一人しかいないのに?



その奥に10人程で満杯になりそうな湯船と、片側半分を占拠する洗い場がある。


浴室、脱衣所共にこぢんまりしているというのに、
ざっと25人分の籠やBoxが置いてある。どういう基準で処理人数を設定しているのか?。



内湯の浴槽からガラス1枚外の露天風呂を見る。


露天風呂側から見る内湯。
ミラー化して見えない。


 この正面フロアが要は休憩室となって、おばちゃんの導線を分断しているのだ。
 軽い目眩を感じながら玄関左手にある下駄箱に靴を揃え、右手の管理人室前にある券売機で入浴券を買うと、そのまま管理人のおばちゃんへ出す。
 従って、入る客と出る客が玄関中央から下駄箱の辺りで滞り、右往左往する羽目となる。
だれだ、
こんな配置を考えた奴は?

 気を取り直して、管理人室の側にある貴重品入れに携帯電話や財布を入れて、デジカメを温泉セットに加えて男湯ののれんをくぐった。

 脱衣所は可もなく不可もなく、新しい施設の為か清潔感も十分である。
地元のおじいちゃん達が世間話をしながら服を着ている。我々の後から着た若い男性は、スキーウェアぽい服装だ。地元の方以外でも、利用する方は多いのだろうか。
 服を脱ぐと、先ほどのスキーの男性の後に続いて入る。
 浴室は、ご多分に漏れず、地元のお爺ちゃん達の会合場所となっていた。
ともかく、洗い場で体を洗うと普通に浴槽に入る。


 ここまでは全く迷うことなく流れ作業の様に出来る。入口の煩雑さに比べて浴室関係は合格点だろうか?でも露天風呂がないのか・・・・と窓を眺めていると突然窓越しに人影が立ち上がる。窓枠が高いせいか?外の浴槽に浸かると内風呂からは判らないようだ。
「なんだ、あるじゃん!露天風呂」
 窓から眺めるとまるで箱庭の様な湯船がそこにあった。4人入れるかな?という程度の岩風呂調である。
まったく期待していなかっただけに、ちょっと嬉しい。

 早速外に出てみる。
 まあ、寒い事は寒いが、先に内風呂で暖まっているので、堪える程ではない。
ぼー〜っと空を眺めて風呂に浸かる。
時折雪が舞っているが、温泉の気流に乗って逆に舞い上がってゆく。片屋根がある山向きの開放は、思った程風が入らない様だ。
やがて、連れ(あ、MRが連れて来られたんだっけ?)も露天にやってきた。
「悪くないね」
「うん、湯野上で雪に吹き付けられる事を考えたら、断然いいかもね」
「あっちは有名だから、マナーが良くない人もいるんだよな」
「この、こじんまり具合がいいよね」
 
こうして、温泉に浸かって湯船の写真を撮るまでに1時間以上粘る事となるが、温泉自体は飽きることなく、普通に入っていたのだった。



大人4人が入るこぢんまりした岩風呂調露天風呂。
屋根が付いているので雪や雨に打たれることなく入浴出来る。



 自宅で調べて見ると、同地区にある建設会社の社長さんが融雪用水の確保の為に掘った井戸が温泉脈にあたり、そもそもは社員用温泉として始まった物らしい。
現在の建物はもう既に3代目のようだ、流石建設会社所有。
 いやはや、羨ましい限りのお話だ。

極めて普通の弥五島温泉。
アクセス、清潔さ、安心感、良心的入浴料、露天風呂付き(笑w と、MR的基本はちゃんと押さえてある。
 地元のお爺ちゃん達の世間話を聞きながら入る小さな露天風呂は、某国営テレビ局の「東北小さな旅」を見るかの様だ。
 地元に密着した、この普通さがたまらない魅力である。


道路向かいの旅館から引き湯している。



湯船に浸かって箱庭の空を眺める。ご満悦の時間が流れる・・・


泉質:  アルカリ性単純泉 (無色透明/飲用不可)
源泉温度:約42℃
効能:  切り傷、火傷、神経痛、打ち身など
入浴料: 大人300円 子供200円
営業時間:正午〜午後10時 年中無休 




全然秘湯じゃないんだけど、地元の温泉感覚がうれしい。
また、湯野上温泉のEscapeSpaとして期待が出来る温泉である