温泉ツーリングスポット


早戸温泉「つるの湯」


(福島県)


2004年、新装成った「早戸温泉 つるの湯」

実はエレベーター棟が正面入口。
かつての面影は微塵も無い。


エレベータかい?まあ、年配の方は多いだろうな。


こんな山の中でこんな変形エレベータがあるとは。


近代的なエレベーターの先には、
なごみの風情が漂う。


なんと、セミ屋台のラーメン屋?
相席がイヤな方は外でどうぞ。


紅いのぼり・緑の河面・ラーメン大盛り。
どれをとっても連想出来ない。


 千二百年もの昔、住む人とて希なる秘境「只見川」。
 大渓谷の巨岩の下に一羽の鶴が飛来して、動かざるを怪しんだ農民が覗き見したところ、清冽な温泉がこんこんと湧き出て、
鶴が傷ついた足を浸している。
 
農民自らも入浴を試みた所、
一浴にして手足の傷や腰痛、疲れが癒されて魔法の如き効能に驚愕したという。
 それを伝え聞いた近郷近在からは、入浴を懇願する声が溢れ、人助けの為ならば、と湯治湯を開いたのが始まりという・・・
(早戸温泉パンフより)


国道252号線六十里越え。JR早戸駅に交差する高架橋を抜ける。


 「つるの湯」で知られる早戸温泉はもともと湯治客をメインとした温泉である。
 古くから日帰り温泉としても営業し、スキー客や登山客などにも名の知れた「飲用も出来る」薬湯として続いてきた。
 近年日帰り温泉の建物を一新し、昔の風情を残しながら現在のニーズに合わせた形態に変化している。
 只見川沿いにある温泉群の中でも、ひときわメジャー物件である早戸温泉。
 バカげた健康温泉ブームや秘湯シンドロームを越えて「総合温泉企業組合」の色合いが見え隠れする、またそこまでやらなければ生き残れない現状があるのだろう。

では、
早速入ってみよう。

 国道252号線三島町の西端にある沼沢湖近くにある早戸温泉。
 会津板下からだと、スノーシェッドの直前にある看板に導かれ左折する。
つづら折れの端末、手前の湯治温泉棟の奥に、新装なった建物と只見川を望む駐車場に到着。
しかし・・・
「ラーメン」
のぼりが立つ駐車場・・・明らかに景観から浮いている。
 
この時点で秘湯の二文字は銀河の彼方に消え去った。
いやいやいやいや、
 最初から「メジャー」と言ってるじゃん。

 バイクを置いて正面入口に向かう。入口には車いす対応のエレベーターと・・・もとい
エレベータだけだ。しかも前進式。
 駐車場は3階、フロントは1階という高低差、川に向かって敷地のゆとりもなく、思い余ってエレベーターという選択なのだろう。
 正面ドアが開くと通路の先に旅籠の様な建物が続く、正面扉の奥がフロントである。番台のとなりに入浴券の自動販売機がある。
「ラーメン、
   
大盛り・・?
 上の段が入浴券、下の段が食券販売となっているのだ。
「ラーメンて、何処で食べるの?」
「ここ(入口)を出て左手の通路の奥にございます」
と番台の女将がにっこり笑う。
 ございますって、何が?食堂?
まさか日帰り温泉でラーメンとは思わなかったが、遅い昼食を摂りにゆく。

 なぜ、蕎麦じゃないんだ?と3回は思いつつ、4月とは思えない暖かな日差しの中、只見川を眺めラーメンを食する。



説明不要ののれんが俺を呼ぶぜ。


やたらと仕切っている脱衣所だな?


平均的脱衣所スペース。誰もがスルスルと扱えるのが良い。


内風呂、温泉旅館然としている。
(当日は大混雑の為、写真はパンフから
お借り致しました)


 ネギ味噌ラーメンはあまり辛くなく、万人向けに調味されている様だ。
それにつけても、幽玄な只見川のほとりで「ラーメン」・・・?
 先ほどの正面ロビーの奥に通路が横切る。その通路を左手に行くと先に女湯ののれんが見え、そのさらに左手に男湯ののれんが下がっている。
 改めてロビーで入浴券を買うと
「2時間を超えると1日料金(千円)となります」と女将に言われる。




脱衣所だけでなく、洗い場等も別に仕切られている意匠とも思えるが、圧迫感を感じる。


内風呂>洗い場>露天風呂と続く
クランクの通路を降りると・・・。


 中は思ったより小さい脱衣所。
構造上の理由か洗面台は別に仕切ってある。大勢の入浴客がいる、今日も満員御礼だ。
まあ来る
時間が悪すぎるよ、俺。
 内風呂はかなりの盛況なのでパス。
もはや構造の都合上というより意匠を感じる別枠の洗い場でひとしきり流すと、早速、クランク状の通路を降りて露天風呂へ・・・。

うむ、絶景!

これはいい。
 正直、露天風呂に入るまで掲載は見送ろうと思う程だったが、露天風呂自体は良い感じじゃないですか。
 露天の正面(つーか建物の只見川を挟んだ対岸はブナ坂崩れと呼ばれる硫黄鉱山落盤跡)を眺めつつ・・・つーのは何ですが。
(集落が埋まってるなんて知らなければ、普通の崖?だものねぇ)



4〜5人しか入れない露天風呂・・・。絶景だよ。



薬湯と誉れ高い温泉が疲れを癒す・・・・


露天風呂からも見える観光桟橋?
温泉神社の裏には源泉がある。



1時間程粘って撮影がてら露天風呂を満喫する。風呂から上がると、番台でポイントカードを頂く。どうも10ポイントで入浴券になるようだ。

 何かスーパーみたい?と思いつつ、風呂から見えた船着場に行ってみる。
 船着場の側には温泉棟と湯治棟で使われる掛け流しの薬湯を支える源泉があった。つるが見つけた温泉、ここがその心臓部だが、機械楊湯なので既に「こんこんと湧き」出てはいない。
 船着き場に係留される屋形船はまだ新しく、温泉棟改築と同時に新調された様だ。



良く整備された早戸温泉全景。
建物は屋形船から見ての景観も十分考慮されていた



  そもそも屋形船があるという所に温泉の多角経営を垣間見る訳だが、屋形船の船着き場から振り返ると、船から見栄えのするように設計されたコントラスト良い旅籠ふう温泉宿が鎮座していた。
「只見川名物朝霧の中で入浴したいねぇ、雪見酒もいいかも?」

 温泉を使った多角経営という側面をどう切り込んでいくか?というのは旅館の主人なら誰しも考える事だろう。また、その方法論も千差万別、同じ答えではないだろう。
ラーメン店、ポイントカード、屋形船・・・次はどんな展開をしてゆくのだろう?
そんな事を考えつつ、早戸温泉を後にした。

泉質:  ナトリウム塩化温泉 (旧源泉名 塩化温泉)
源泉温度:約50℃(動力楊湯)
効能:  慢性関節リューマチス、特に坐骨神経筋肉リューマチス、腰痛、
     外傷(擦り傷、切り傷)やけど、慢性皮膚病、アトピー性皮膚炎、
     慢性胃腸病、打撲、骨折、慢性婦人病、神経痛等神経諸症、神経炎、
     慢性摂護腺炎、各手術後、病後快復、各種慢性諸病、糖尿病、慢性消化器疾患、
     慢性胆嚢炎、胆石、痛風、神経痛、関節炎、美容、美肌、疲労回復等
入浴料: 大人500円 子供300円(共に2時間迄、それ以上は1日換算となり倍額)
@日帰り温泉棟
日帰個室:4時間2000円(それ以上は倍額)
営業時間:午前9時〜午後9時(入場は午後8時30分迄)
食堂:  ラーメンハウスつるの湯(各種ラーメン〜650円前後)午前11時〜午後7時30分
屋形船: 10名以上参集時に随時運行(一名1500円・各種プラン、オプションあり)
@宿泊湯治棟
宿泊:  素泊まり一泊3825円(相部屋の場合あり・弁当の予約あり)
     連泊3300円(三泊以上)