廃道日記(Riding・Report)



2016 万世大路新沢橋再び!





廃道日記39-1
旧橋日記4
 再訪「"新沢橋"」そして「"大路橋"」



橋の命は、
はかなくて。


それは隧道にも匹敵するゲート。
その沢を渡る事によって
ハッキリと季節や気候の違いを、
肌で感じる事が出来る
空間ゲート。

しかし、
隧道に比べて、その命は短い。
隧道も橋梁も、
かつて百年存命を詠った時期が在った。

そのコンクリート技術も、
今では限界の説がある。

一本の峠に、
二つの橋が送る
異なる結末。




●プロローグ
 天皇陛下が名付け親という明治三等国道(旧13号)
「万世大路」
 明治18年には国道39号線と定められ、米沢街道は栗子山隧道や二つ小屋隧道、鳥川橋など4本の橋など、名だたる廃景がひしめく初心者から上級者まで愉しめる廃道である。
 しかし
「峠越え至上主義」のせいか、皆さん栗子山方面に視線が行きがちな事もまた事実である。
 個人的には昭和ヒトケタの改修工事の方が、自動車の通行を前提とした道路改修工事とか換線なんかの方が興味のある出来事である。
 
まるで林道の様なヘロヘロの道やショボい橋をボンネットバスなんかが交互通行しながら走る様など、妄想が愉しめる道が好物なのである。
 そんなMRが万世大路でお気に入りなのは、勿論隧道遺構も大好きだが、
むしろ二つ小屋隧道から下界の「新沢橋」辺りまでの廃道である。

通称「七曲坂」と呼ばれた二ッ小屋隧道から東側、福島方面の約30Km近い区間の大ヘアピンコーナー群の事である三島通庸閣下の無謀な線形を程よく均した転圧砂利路面はヘアピンの最大幅員が8m近く取られ、見下ろす者をただただ圧倒する。
 
半世紀ぶりに新沢橋にオートバイを通したのが震災前の2009年、昨年は路盤欠損があったらしいこのルートは一体今どうなっているのだろう? 恐ろしく雪の少ない2016年4月、我慢出来ずに行ってみる事とした。



現在の国道13号「栗子ハイウエー」の
某路肩待避所をベース基地として悪茶轟を配置。
最悪ここから降下も視野に入れる。


現栗子東トンネル抗口。
驚く程に雪がない!


●何処から入ろう?。
 さて、簡単にルートのおさらいをしてみよう。
 この旧道に出入りする事を前提とした場合、一般的(何を基準に一般?)に東栗子トンネル福島坑口側にある高速道路新栗子トンネルの横杭付近から登り、旧飯坂スキー場を経て旧万世大路に行く道と、新沢橋の袂にある警察官殉職者慰霊塔への小径しかない。
 しかし震災以降、慰霊塔下のパーキングエリアが工事用備品置き場となって閉鎖され、工事が終了した跡もそのまま立ち入り禁止となっていた。
 前日夜にメジャー片手にこの小径の入口の所にある出入りで来そうなガードレールの隙間を計りに行ってみると、
その幅何と36センチ!45センチ以上無いとKLX125すら通れない。

 この時点で米沢スキー場を往復するか?適当な土手で単車ごと叩き落ちるか?という展開になりつつあった。
まあ勝って知ったる道なのではあるが、どう転んでも帰れる様に当日はわざわざ悪茶轟で最寄りのパーキングエリアまでKLX125を搬送した。
 うららかな日曜の日差しの中でツーリング中の諸氏が横目で視線を投げかける中でのアタックと成りました。



「何故ジム二ー?」昨年末からここに路上駐車中?。

 
 どうか知り合いが居ません様に、なんまんだぶ。

●福島にも保存会?
 
「降ろしたバイクで薮に行くぅ〜♪」(尾崎)などと鼻歌まじりに走り出す。念のため慰霊塔下のガードレールにKLX125を当ててみると・・・左右のシュラウド・サイドカバーを外してギリギリ通れるかどうか?だった。
 無論通過の後にガードレールの内側で外装の取り付けなんてしてて、道路管理者や工事関係者、警邏中の警察などに見つかりテロ行為と誤判断されるのはヤバそうだ。当初の予定通りに東栗子トンネル福島坑口側にある高速道路新栗子トンネルの横杭側からトツゲキする。
 
廻りが異様に残雪が無い。
 4月頭ならまだ東栗子トンネルの左右には除雪の残滓が堆く有る筈だが、何と下の沢まで貫通で見えるではないか?雪なさ過ぎじゃねーかよ、夏場の水不足が心配だ。
 現在は高速道路用の新栗子トンネルの横坑と成った所から進入する。




取り敢えず万世大絽に関する説明。
可も不可もないまっとうな説明だ。


 「この先約300メートル地点の
   沢部暗橋が陥没(崩落)しており、
   自動車は通行出来ません」
 MRはてっきりかつての飯坂スキー場(現在は廃墟)のリフト管理道路が万世大路に合流していると思っていたが、実はこの道自体が昭和一桁のバイパス開削時に資材運搬路として使われたのが始まりらしい。
 現在の栗子ハイウエーの下になって道はないが、かつては沢沿いに大滝村と繋がっていたようだ。

 登りきった所にすっかり数字の黒が抜けた黄色いナンバーのジムニーが一台。これが某掲示板を賑わせる森林組合が万世大路に置く作業用車両の一台なのだろうか?去年の11月に目撃してからココから殆ど動いていない気がする。
 ワイパーを立てて置く所など、明らかに常設展示状態だ。無論窓からのぞいても自殺してる人も無く奇麗なもんである。舗装路が途切れた先には軽虎が2〜3台・バイクが2台か或は一往復してそうだ。
 2hpcの空気圧もそのままにバレル4が一声上げてMRは前進を開始する。
やや荒れの路面をトコトコと登って行く。幽玄な姿のリフトの残骸もいつも通りだ。倒木も少なく、万世大路に突き当たる。
 道也左折が本線二つ小屋隧道経由旧大平部落行き、右折が本線、新沢橋経由中野新道(福島)行きである。


「また、道の倒木が在ると共に、山側からの流水等で
路面がぬかるんでいます」


「知ってます!」でも見た目、前回2009年から比べても
ずいぶん綺麗だ。


まるで田中君のようにけだるげで
まったりしている旧道区間。

 
ちなみに「七曲坂」は明治、大正期にはここより上に連続ヘアピンが存在し、そう呼ばれていた。
 そして昭和8年から12年までの大改修バイパス工事で、上の七曲がりは大きく緩和され、今度は
ここより下に出来たバイパスのつづら折れ区間を「七曲坂」と呼ぶ様になったのである。
 その分岐の入口。
右折側に昨年(平成27年)春から置かれるゲートがある。



「なんじゃこりゃ?」 遠くから見れば、まるで炭焼き場のような?


「この辺かな?」 昭和12年竣工時の撮影地点の擬定地がここ。
ヘアピンの番号は東の福島側(新沢橋側)から数える様です。



木が根っこごと倒されていた。




おぉ!残雪の最後か!

「福島万世大路を守る会」名義?のこのゲートにはどこからか拝借したような万世大路の歴史と意義、そしてこの先600m程先の沢にある通称「オサ沢」の暗橋が流失してクルマが通行不可な事を知らせていた。
 山形米沢に同じ様な名前の会が出来てはや5年、
相変わらず福島県民の三島嫌いはもはや土着的問題とまで言えそうだ。
 
まあ確かに悪いヤツでは有るがその道路思想の高さは一世紀の時を越えて現在の福島県の交通の礎となった事実を歪めてはならないだろう。



コレが多分「金山沢」
いつもなら、雪解け水で酷い泥濘なのに部分乾燥してる。


小さな沢を越えてゆく。ってオイ!
「多分これがオサ沢」だ!

 
手段は大いに間違っていた感はあるのだが。
「さて、逝きますか」
 写真撮影と空気圧を調整して、震災後初めて、再び新沢橋を単独で目指す旅が始まった。

●有言実行?
 入り込んですぐ気がついたのはあまり泥濘まない事、あの墨汁の様な芳醇な発酵泥濘の香りがあまりしない事だった。勿論コレは、リアタイヤが不用意に路盤を掘り出さない効果が大きいと思われた。
 そして、予想以上に倒木が少ない事、非常に見通しが良い事も、つまりそれは木が少なく残雪が予想以上に溶けて、路盤の乾きが例年よりかなり早いのだろうと思われた。
「例年以上に条件が良いと言う事かな?」
 
 あとは例の暗橋の流失具合だろうか?前に通過した際の写真を見る限り、上流側にエスケイプ出来る筈だ。
 前回コーハクさんが佇んだ所のコーナーに何やら黒い陰が見える?誰か作業小屋でも作ったのかな?




「埋め戻されている!」 ヤルな!保存会。


 近づいてみると、何と根っこ共の倒木だ。楕円形に立ち上がった根っこが建物に見えたのだ。どんだけ強風なんだよ?と思って、すぐに違うと考えついた。
 昭和8年の改修工事、
当時の路面仕様は「転圧砂利引き」である。コンクリート舗装を受けたのは橋と隧道だけなのだ。
 上に何れ程土を被ろうが、砂利に木の根が張り付くのは普通の山林に比べ地耐力は半以下じゃないだろうか?道の上に根付いた木が倒れるのは、必然なのかもしれない。
 残雪をかわしながらコーナーを曲がると、いよいよ道は
「七曲坂」区間に突入してゆく。 最初の沢を越えて、次に・・?
「いやいや、今の沢だな、おい!」


その先に見えるのが「7番コーナー」
コーナーの数え方は東の福島側からの順番らしい。

何と!暗橋が補修されているではないか!
「コンクリートで打設したな?」
 橋の手前、敷き直した砂利に紛れて、手で練ったフンイキのコンクリートが捨てて・・、いやもとい道路中央に均してあった。
ここでようやく気がついた。
 途中のここまでの路盤が妙に安定した理由。泥濘るんで無い理由、異様に倒木が少ない理由。




「さあキタぞ!」大きく回り込んだ7番コーナーが6番ヘアピンに大きく進路変更する。


「(6)ヘアピン!キターー」
最大幅7mとあるが、どう見てもそれ以上あるよな?。


「誰か境界杭を塗ってる!」保存会か?。


道路総幅7m(ヘアピン部分はどう見ても最大9m近い)の道路境界杭。恐らく戦前の境界だ。

 誰かが雪解けを狙って、或は昨年末にココまでの道を整備し、資材を運んでヒューム管を入れ直し、捨てコンで固定して路盤補修をしたのだ。
 無論ダレとは?「福島万世大路を守る会」の方々が最有力だろう。
「素晴らしい、なんて有言実行な方々だ!」
 
そしておそらく、この道の管理者である営林署か国道維持管理出張所も一枚噛んでいるに違いない。
高速の"新栗子トンネル"が絡んでいる道だからなぁ。」



「折り返す直線」いい感じの道路幅6mの旧国道。


その先の「(5)ヘアピン!」

そしてMRはやっと気が付いた。
「この赤い杭がその答えか!」
 多分、旧道のあちこちに打たれる計測杭とピンクのリボンが、歴史の道としての認定を受ける為の確認の為のマーカー付けと見て取った。
 この暗橋の直し方も応急的で、尚且つ「通行する人」が安全な道幅を確保してあり、それは決して「通過車両」の為では無い様だ。
 そうして2009年以来に越えた暗橋の写真を撮ると、いよいよMRは本日第一の目的地





「(5)ヘアピン出口」



その、内回りに小径が在る。


「昭和改修区間」に突入する。
 そのコーナーは福島側のふもとから1番を数えるのが定説で、新沢橋の先のヘアピンが1番と成る。

●三島カーブの残像。
 
道はいよいよヘアピンを持って、新沢橋に向かって急速に降下を開始する。
 この時期、雪によって押しつぶされた雑草の楽園は視界良好で、青空の下に、その本来の道幅を綺麗にさらけ出していた。


 路肩にまた境界杭。
 
その下を見下ろしてみると?。


「(5)出口から下に(3)のヘアピン」






↑「(4)ヘアピン」
 おお、かっこいい。


ヘアピンを切り返し
「(2)コーナーへ」  

 
福島方面に下ってゆくヘアピン区間の第一コーナーは旧道を拡張した最大幅7mのヘアピンコーナーだ。
俗に言う「三島コーナー」の拡幅版で、本来の道筋は右ターンのイン側に片車線分の道があっただけと予想している。
 昭和8年以降の拡張時には山側の岩盤を人力で切り落としたのだろう。
 この次のヘアピンまでは明治道の拡幅区間だ。
 
この昭和バイパスはヘアピンの最大幅が7m前後と非常に広いのが特徴である。これは勿論、当時はまだ非力なモータリゼーションへの対応だろう。


「(2)コーナーに向かう」
 
路肩の法面処理が鮮やか。

「(2)ヘアピンがやたら広い!!」
これまでのヘアピンで最大幅だろうな?10mはありそう。
「(2)ヘアピン突端よりコーナーを望む」
「(2)の先には明治道」そのうち行かなくては。





最終「(1)ヘアピン!」

バイクの前の崖下に明治の境界杭?
だが塗装は受けていない。
                  
相変わらず定規で引いたかのような平面。
これが昭和ヒトケタの土木工事と言うのだから
恐れ入る。


 また、
この後に続く昭和バイパスの象徴でもある新しい三代目「新沢橋」へのアプローチが大正期の二代目橋より、さらに下流にある為でもある。
 一方の明治道は5番ヘアピンからヘアピンを曲がらずに直進して、険しい岩盤を削り通ってゆく。実は明治14年前後に造られた最初の「新沢橋」は現在の三代目の上流に在った為だ。
 流石に単車では行けそうにないので、そのまま昭和バイパスを行く殊にする。
 また、ヘアピンのいくつかに、さらにその内側を回る道のような物も存在している。2009年に始めて見た時は、明治道との分岐が確認出来ず、これも旧道の一部と勘違いしたがどうも違うようだ。
では、これは何?
「歩道?水路?」
どちらもありそうだが、どちらかと言えば歩道かな?
 2つ目のヘアピンは一見上と同じようで
実はここで明治道とは袂を分かつ、昭和ヒトケタのバイパス区間と成る。


「(1)を折り返すと出口に倒木」
「いよいよ新沢橋までストレート!!」


ゆるやかに左に曲がる昭和バイパス。
崖崩れのような法面になにやら?


ああ、やっぱりあの「境界杭」
だわな。


下に電光掲示板とライブカメラの統合機械室を兼ねた小屋が現れる。


 明治道はこの先、崖沿いをゆっくり降りてゆく。やがて新沢に突き当たると上流方向左にターン。300m以上上流で初代「新沢橋」に辿り着くのだ。  
「一番下の"1番ヘアピン"を抜けると道はいよいよ新沢橋に向けての一本道だ!」
 右手の方からスキールが聞こえる。
そこには現行国道である国道13号線「栗子ハイウエー」が見える。
 
いよいよあの碑が見えて来た。そしてその奥の親柱も!



「新沢橋!キターー!!!!!」
「警察官殉職慰霊塔」と新沢橋(三代目)が見えてきた!。

前振りが長すぎだよ。ついに橋の区間へ!
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