Autumn Tour's 2006
    〜Debt End HINOEMATA〜
 
「檜枝岐“紅葉”ツーリング」1













総ての始まり「ファーストプロローグ」

「ワーカーホリックにはツーリングが一番ですよ!」
一週間後、さる友人から聞かされた言葉を、今、文章を反芻しながら思い出した。
今となっては、苦しみの始まりである。



カミングアウト



 某月某日、私は優雅に朝風呂につかり、露天風呂から色鮮やかな紅葉を眺めていた。
尾瀬檜枝岐温泉共同浴場「燦の湯」、夜には味わえない格別の朝である。
 この時、この後2週間に渡って私を悩ませ、焦らせる事象が起こる事など、
この時は予想だにしなかった。
そして、その結末も。
 この時はただ純粋に昨晩の寒さと恐怖、疲れから解放されたこと、漸く訪れた遅いおそい
夏休みという自由に酔っていたかった。ただそれだけである。まだ朝も暗いうちから誰もいない山奥のキャンプ場を撤収し、入る朝風呂のなんと爽快な事よ!
 苦節10ヶ月、思えば我が人生史上最悪の年も、何とか乗り越える事が出来そうだ。僅かな、たった1日半のささやかな秋頃の夏休み、ここはひとつ、じっくり噛み締めて走ろう。


 
もし、神成るモノがくれた休みなら、季節は違えど喜んで享受しよう。
(この場合の「神」とは、つまり我妻である事は言うまでもないが、あえて記名しよう)
「ゴポッ」
「ウエェェ」
イカン、色々考えてたら風呂で寝ちまって温泉飲んじまった。

まあつまり、それだけ人生に疲れていた、と言う事だろう。
だが、資本主義の神様はそんなに私に優しくは無かったのだ。

 
偽りの幸せ

 逃げる様に(つーか実際逃げてきた)家を飛び出した為、情報らしい情報を仕入れる事が出来なかった。
 その為、コンロ用のガスボンベが一つしかなかったとか、携帯電話の電池が無く、充電器も忘れて来たとか、デジカメのアルカリ電池が充電不十分だとか、キャンプ場は既に閉園していたとか・・・昨晩でかなりの障害が発生していた。
 しかし、どうにか生き延びた私は朝風呂からようやく這い出し、データを確保した後、着替えてROADに飛び出した。
 この浴場の前を通る道こそ、川俣檜枝岐林道である。林道は標高1700m級の帝釈山を始めとした奥羽山脈の一端をかすめ、北関東は栃木の川俣ダムに通じる高原林道である。昨年、土砂崩れ通行止めの情報が入ってたが、そこは林道ライダーの性、現場を確かめるまでは鵜呑みにしない、というか判断材料がまるで根拠レスな「大丈夫、通れる」などという気持ちになっている。

 それというのも、朝5時半ごろ、すでに温泉で林道を登るライダーを確認していたからだ。
 かなりハードでも通過出来るのかも知れない?そんな間違った「通れるカモ電波」を私の脳はダンペンテキに受信したのだろう。経験上2割の通過に掛けたのである。
そう、2割。


ALBUM

突入を試みるも・・・。


駐車車両で事務る監督さんの視線が熱い!(T^T)
非道隧道入口→後日レポ


突入せずに様子見・・・?


だ〜れもいない。
・・・熊さんが遊びに来ない事を祈りつつ。



早朝出発。このあと風呂に逝って、さらに林道に戻ってくる。
MRお気に入りの所だが地図にはない。






川俣檜枝岐林道、帝釈山の頂上部のみ「帝釈山管理道路」と名称が変わる。



いつの間にか崩れている。


川を渡る・・・2回ほど。


福島側は登山道入口となる林道頂上までの
距離柱が幾つかある。



朝日を浴びて輝く・・・


 あとから考えると、時間は今日1日しかないのに、何故にそんな無謀な発想だかが自分でも解らない程だ。さらに悪い事にキャンプ場を過ぎてダートに入っても、ゲートのある林道標柱前で撮影していても、何処にも「川俣へ通行不可」などという標識はなかった。なかったはずだ!(と撮影ている時点でその異常に気づかない私)


綺麗だった。
 その異常さに気づかないほど、檜枝岐の紅葉は美しかった。何枚か写真に納めたが、どれも不完全燃焼というか消化不良に思えるほどに、実物の紅葉は綺麗だ。
 腕は勿論、バカチョンのデジカメで表現出来無い事は百も承知なのだが、口惜しい。
そう思える程の色具合だった。
 そんな紅葉も最後の橋を渡った辺りから徐々に少なくなり、帝釈山管理道路の標識とゲートの前に着く頃には、針葉植物も少なげな緑をさらになくし、大きく拓けた青空が風景を支配していた。
 比較的大きなアールで登ってきたこの林道も、ここから急激にコンパクトかつミニマムな、まさに崖を伝い渡るような林道となり、これは頂上を過ぎて下りの茨城県にはいっても続く。

RAID君は快調だった。
 昨日無理矢理導入した駆動系(前後スプロケ・チェーン、ともにTTR-250R用)と前後タイヤの慣らしが今日の本当の目的で、別にキャンプでなくてもよかったのだが、今しないと今年はテントを開けないという事態になる、個人的にこれは何としても避けたかった。ゆえに重くても積んできた。

 そして辿り着いた頂上の県境駐車場で、予定通りのモノを見る事となる。
下りの道路にはデカデカと
「土砂崩れによる通行止め・川俣方面通行不可」の赤文字とゲート脇の通過によるタイヤ痕。 




朝露が残る紅葉が朝日に照らされてネオンの様に輝く。



針葉樹の緑が目に痛いほど新鮮に見える。ゆっくりと水蒸気が醸し出すウェールが美しい。


燃えるような黄色のトルネードに向かって、一本の道が貫く。
その鮮やかな黄色に、ただただ見とれるばかりだ。



 
ヘブンズゲートの先は?

「イケル?!」
 もう停まらない、まんまと罠に掛かった狸?は一目散に、転がるように山砂の林道を駆け下りていった。
 昨晩高速走行の為に空気圧を2.0kgのままだったが構わず突き進んだ。開ければ滑りながらもキチンと車体はコーナーの出口を向いてゆく。テント積載をモノともせず、RAID君は下ってゆく。



帝釈山管理道路に突入・・・



カロゴン?え?・・知り合いかと思った(核爆。
帝釈山林道福島側はこのようなヘアピンで急速に高度を稼いでゆく。


頂上の駐車場。標高は実に1700mとある。この日も10台以上の駐車があり、賑わいを見せる。
天候からも今日は午前中勝負だろう。


帝釈山・台倉高山の頂上近くにある馬坂峠からの登山ルートは初心者向きらしい。
帝釈山から田代山への縦走コースもあるようだ。


なにィーーーーー!。ここまで来てコレかい!


 茨城側のゲートで撮影のため振り返ると、凄まじい張り付く様な林道経線が青空の山肌に浮かび上がる。
所々に人間の頭を越える大きさの砂岩がゴロゴロしていて、縫うように2条の轍が走っている。
 この時、すでに結末は見えていたにも拘わらず、否、あえて無視して私はバイクを先に進めた。
 林道はほぼ廃道初期の状態を示し、通過の可能性は極めて低い。それでも終末に向けて下り続ける。
「しょうがねぇよ、性分だから」
と思ったヘアピンコーナの先は土壁が立ちはだかっていた。

 一瞬崖崩れと判断がつかず、ブレーキングが遅れて砂埃があがる。それはダウンヒル中止の狼煙だった。少々横に停まったRAID君の足場を固め、バイクを降りて天を仰ぐ。
 目前には200mはあろうか?という地滑りだった。大きな反復のヘアピン、上の道路の基礎が露出しているようだ。
 道路に堆積した土砂、樹木はコンマ10のユンボを1日回せば十分除去可能ではないだろうか?。
どう考えてもワザと撤去していない?。取り敢えず5mは堆積した土砂を登り反対側を見るとそれは確信に変わった。

シビックシャトル?



あ、タイヤ痕・・?。え、逝けるンですか?


え、逝けるンですか?マジで?





 とにかく駐車車両が居たのだ。
埃も被ってないので、今日朝に駐車したのだろう。ちなみにここまでバイクで登りあげても、あの車は見事に下りラインを塞いでいる。万事休すだ。

「ああ、今日もまた「Debt End」を確認してしまった」しかも致命的。

 馬場林道から川俣湖に出るしかない。馬場林道には田代山か安が森を抜けるしかない。
 そして、途中で給油しなければいけない。そんな時間計算をしながらヘアピンを登ると、リアが浮き石に乗って滑った。

すかさず

ギアを1速下げてアクセルを開けたが着地した瞬間に接地の感覚は伝わらなかった。

 左足をキャンプ用品満載の車体に挟み込んで、体は洗濯板のような岩肌にしこたま叩き付けられた。

痛恨の転倒である。



天然の椅子と化した倒木。
木も岩もゴロゴロしてます。やっぱ廃道?


馬板沢を渡る。橋は総て昭和57年製




崩落現場、一瞬ビビリました。



大体高さ5m・差し渡しは10mぐらい、。



2~300mあろうかという崖崩れ。上の林道のコンクリート基部が見える、?

白の点線丸の部分。
車が居るのでアプローチ出来ない。
つーか、登れないわ!




2に続く。



 何げに犯罪を犯しつつ、転倒の足を引きずって帰る。



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