Web-Plan!DIY Report



試作品をフィッテングしてみる。間隔がせまいのでこの後広げるコトに。


ジムニーに戦車盾”タンクガード”


 それは、掲示板の書き込みから始まった。

 車の部品は、売っている物を買って付けるのが普通である。
それこそ星の数ほどの部品で構成される工業製品の自動車やオートバイであり、アフターパーツメーカーはその部品一つ一つをさらに吟味し、付加価値の高い(でない場合もある)有用なパーツを作り出し、世に売り出している。

 カーショップや量販店でこれらを買い、付けてもらうのが普通だろう。

 自分で作る苦労は厭わない。ただ、時間的財政的な問題からしないだけである。こうしている間にもホームページの更新は定まらず、育児と豪雪にさいなまれ、じりじりと焦燥感が鬱積してゆく。

今回は大型のベンダーが必要なため、いつもの鉄工所さんのご協力を願った。
社長が手にする奥の銀色のがSJ30Vさんの2Stジムニーに付けられた手作りガード。同じアルミながらこちらは2m/mと薄い。
手前のクリーム色が出来たての今回の試作ガード。SJ30Vさんの手作りより10ミリほど大きく作ったはずだが、実測で5ミリ程度しか大きくなっていない。
予定では車軸側(前側)のみピースによる受け金具溶接の予定だったが手違いがあり、やむなくもう片方もピース溶接になる。この為、ボルト・ワッシャーが掛かる部分の一部に溶接部分がかかってしまう。

 バイクのサスは潰れ、パソコンは落ちて、日々焦りだけで過ごすことになる。
 実際、道具や消耗品、塗料などを考えると、「ヤフオクで落札した方が安いんじゃねーか?」そう考えると、まだ見ぬ林道に足を向けた方がいいのではないかと?思ってしまう訳だ。
 正直、
自作するという発想はありませんでしたええ。
この人が言い出すまでは。



 
掲示板にその情報が書き込まれたのは、年も暮れる平成16年12月21日である。目立たず、なにげに添えられたメルアド(http://www.tcp-ip.or.jp/~furu/jisaku/tank_g.htm)はなかなかのインパクトがあるものだった。

 7年間無更新という放置プレー全開のHPは、まさに「宝の地図」状態である。それは辿り着きたいと思って日夜奮闘する人間以外には用をなさない設計図ばかり……なのだった。
七年前とは、まさに先人の遺業に感謝である。
 ちなみにタンクガードとはオフロード用部品のひとつでジムニーの場合、車体後輪の後ろにある燃料タンクの防護板である。オフロードで地面への干渉による燃料タンクの破損を防ぐのを目的に装着するのだ。
 彼は材料も調達してきた。職場の廃材と言うには余りに立派な資材である。捨てられる処を確保した訳で、言葉道りの「拾う神」となるわけだ。材質はアルミ、厚さ5m/m、サイズはH570xW740を2枚。ん、2枚?「職場の機械で曲がらないんですよ。MRさんの分も確保しました!」

成る程、お声が掛かる訳だ。思わぬハッピーボーナスである。
「有り難うSJ30Vさん」

出来上がったタンクガード。(奥2台)手前は傷が物語る百戦錬磨のSJに付いてたガード。
真ん中は試作のJA11V(おいら用)・奥の穴無しはSJさんのJA22用。
22はタンク形状は同じながらボルトの位置が違うのでわざと穴開けしていない。


 さて、早速懇意の鉄工所に資材をもちこむと、笑顔ながらも少々迷惑そうに対応してくれた。
 この鉄工所にはベンダーと呼ばれる金属曲げ加工機があり、今回のアルミも一応機械的限界の5m/m厚ということで、その複雑怪奇な曲げ行程はプロといえど曲げるのは大変だった様である。アルミは3m/mを越えるとクラック(ひび割れ)が入りやすいとの事で、厚さ的には対応機械だが、無理をすると曲がる前に破断してしまう、との事で、見本的に1枚を曲げ製作し、仮フィッティングをして、開口角度の再チェックを行い、このデータを元に二つ目の曲げを敢行、こうして二台分が無事完成した。


 
一週間後、装着前日に発注主のSJ30Vさんに取りに来て貰い、出来を見て貰う。SJさんの自作と今回の2台を並べるとそれなりに壮観だ。半日たっぷりとジムニーの話で盛り上がる。SJさんの新型(JA-22W-1)も初めて拝見した。

 彼も、喜び勇んで新旧の戦車盾をもってかえるのだった。
そして今日、おいらはいよいよDIYでこれを取り付けるコトとした。


ガードを取りに来たSJ30VさんのJA22W-1(紛らわしいなぁ)


 取り付けるに当たって会社から道具をお借りした。
 充電ドリルドライバーとベビーサンダーである。充電ドリルドライバーはコードレスの12Vインパクトドライバ、サンダーには交換用の切断・研磨用ディスク刃。あとは手持ちのマックツールで対応出来るだろう。
 10時を待ってホームセンターで備品の確保。駐車場で共締めとなるタンク取り付けボルトを1本外し、店内で同サイズのボルトを探す。
 ジムニーのタンクガードは3本のボルトでタンクごとフレームに共締めとなる構造なのだ。
 材質はアルミでもステンレスでもなくスチール。耐久性と整備性で群を抜く、錆びるとのご意見もあるが、こじれたアルミやステンのボルトほどやっかいな物はない。5m/mのタンクガードにワッシャーを考慮し、純正より10m/m程長い方がよさそうだ。

ベイビーサンダー用のアルミ・ステン用研磨ディスクを2種類追加しておく。加工用備品購入費は2.500円程である。
 自宅に戻ってフィッテイングしてみる。


用意したサンダーと研磨用ディスク刃。

クリームの塗装を剥がし終わり、磨きをかける頃
ようやくコトの重大さを悟る。くそ〜。


 車体を3寸角のバタ材に乗せ、段ボールを敷いて車体の下に潜り、ガードを当ててみる。
 このガードは先に試作した方なので思った以上にボルト穴が合わなさそう。4点固定のボルトの内、なぜかタンクのみに固定の1箇所を仮固定して基準にし、穴の位置を油性ペンでマーキングしてゆく。ついでにサスペンション・ダンパーなどと可動部分が接触しそうなところをマーキングして先に削るようにする。

 アルミの良い所はその加工性の良さだ。充電ドリルドライバーに穴を広げる為の三角キリという特殊なビットを装着、気持ちが良い程手軽に穴は広がるが、場所によってはワッシャーの外形寸法限度ぎりぎりである。サンダーに研磨用ディスク刃を装着し、取り付け金具の四隅を擦り落としていく。
続いてサンダーに更に細かい研磨用のディスク刃を装着し、アルミ板表面のクリーム色を剥ぎ取ってゆく。こちらも気持ちよく剥がせるので、その落とし穴に気づくのはこの一時間後である。 そう、アルミの地肌を磨いてミラーとまではいかないまでも磨くつもりであった。

 しかしディスク刃を換装し、バフと呼ばれる研磨ディスクで磨き始めると、おいらはその間違いにやっと気が付いた。発熱温度が低いため、サンダーでは熱で表面が溶けすぎて磨きにならないのである。ががーん!

 後に下請けの板金屋さんに聞くと、一口にアルミと言っても#1000〜5000と種類があり、化合金属や強度により研磨による光沢が可不可な場合もあり、普通製品材以外ではあまり磨かないと言う事でした。また、専門の資材(専用バフや磨き粉)などでしか磨きが出来ない場合もあるとの事、勿論この時点で知る由もありません。廃品とは言え大型電子機器の外装部品だった事を考えれば電解研磨くらいされてたかもしれません。


当初、タンクとガードの間に挟む予定だった
ウレタン材。隙間が狭すぎて割愛する。
穴開けに使った充電ドライバー。

シルバーで塗装をしなおす。写真で見ると
綺麗なんだけれどね〜。

ボルトに溝を作り、応力の逃がしにする。
センターの干渉しそうな部分に切り欠き。
この後もう一回塗装する。


のページに行く。
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 やむをえず、銀のスプレーを買いに行くMR。ううむ、かっこわるいけど仕方がない。(何故銀>何となくイメージで)

 表面を溶かさない程度に綺麗にならして、シンナーで研磨した粉を拭き取り、サフェーサー(定着剤)もなしに塗装開始。試しに塗ると十分密着するので、そのまま塗装を敢行する。どうせ塗装するなら何故に塗装を剥がすかな?俺。幸い、銀色に塗装するとなかなかイイ線に見える、というかそう思わなければ悲しい程である。

 塗装は裏、表、とそれぞれ2回ずつ塗装し、裏と表もほぼ差がない程度に収まった。

 花粉症にやさしい天鶴茶を飲みながら塗装が乾燥するのを待つ事1時間、段取りを組み直していると幾つか問題点が出た。

リアサスペンションのダンパー部分。
クリアランスは約5m/mほどしかないが、もとよりここがそれ以上前後に動くとなれば、それ自体大問題だが。
上下方向については画面左手前に見える可変ショックアブソーバーのダイヤルまで15センチはあるので多分大丈夫だが、現状より長いストロークのサスでダイヤル付も装着可能と思われる。
因みに写真上方向が後輪車軸で前方向。写真下がリアバンパー側となる。


 先日、掲示板にもあった「衝撃の逃がし方」である。いかにアルミとはいえ厚さ5m/mは共締めであるフレームにダメージを与えると言う話だ。あとはフィッテッングの時は気が付かなかっが、リアデフの後ろ側に回って繋がるリアブレーキのワイヤーが干渉するかもしれないという事だった。特にワイヤーを固定する金具がオフロード走行時にどう動くのか想像すると危険と思えた。

 塗装が乾いたところで再びこの点を改良する。

 まずは四隅にあけた穴に、外側に向かって一筋刻みを入れて力が分散しやすいようにする。これを更にワッシャーを介して止めるのだ。衝撃をうけてもワッシャー部分でズレるコトによって力を逃がす。刻みによってボルトより先に金具が変形して衝撃が逃げやすくなる。一方、ワイヤーの干渉部分は受け金具を一部を切り欠くコトで回避する。

リアデフの後方、燃料タンクとの隙間にリアブレーキ及びサイドブレーキのワイヤーが走っている。
なかなかいい場所に陣取っていてここを壊す人は少ないだろう。
デフはサスペンションから比べれば格段に動かないが、それでもジャンプなどリアサスが両輪フルストロークしそうな場面では干渉の可能性があった。
今回は受けピース幅4センチのうち半分の2センチをカットし、配管の逃げを作って置いた。


 部分的に塗装を直し、乾かして居る間、本体側に貫通する三つのボルトのうち、車体内側(リアデフ側)の二つを外す。燃料は殆ど入ってない状態とはいえ鉄製のタンクは重みで撓み、見ていて少々怖い。
 早速タンクガードを嵌め、新しいボルトをワッシャーを組んで交換する。よし、切り欠いた部分はワイヤーを十分に逃がす距離がある。ある程度ボルトを締めた後、後ろ側(リアバンパー側)のボルトも外す。試作品なだけにやはり余裕がない。タンクの間に挟む予定のウレタンは割愛し、そのままボルトで留めてしまう。最後のボルトはタンクの金具に留めて完成。
 取り敢えず写真写りだけはいいが、仕上がりはいかにも「それらしい」雰囲気、やっぱハンドメイドな感じである。何とか太陽が沈む前に取り付けが終了し、まずはめでたしと言ったところかな?。


 
今回に限らず、おいらの改造はこんな物が多い、自分で図面を引いたり入手したり(今回はなにもしてないけど>俺)して、自分の出来ない部分は専門の方にお願いし、取り付けは自分で行う方がコトが殆どだ。

 溶接・ガス切断の経験はあるが自宅に設備はなく、とりたてて自慢できる道具も持ち合わせないが、一般の人は普通そんなもんだろう。そういった人たちでも、考えようによっては自分で出来る事もある。これはDIYの理念 " Do it yourself " 「自らの手でやろう」にも通じる(多分)。今後もこんな感じでプチレポートをお届けしようと思います。

最後に、こういう機会を与えてくれたSJ30Vさんに改めて御礼申し上げます。


完成したタンクガード!。戦車盾の異名通り、守護神に成り得るのか?楽しみである。