温泉ツーリングスポット







土湯温泉"不動湯温泉"

露天風呂


(福島県)




●古き良き温泉宿にも
 震災の影響が色濃く・・。


 温泉とは、地球の鼓動で、地下水をほんのちょっと暖めて貰って満喫するアースパワー(ナースではない、と注釈を付けると安物の官能小説の様だ)
である。
 それ故に、今回の様な震災を引き起こす程の大陸棚運動は、周辺の地下水脈や火山に多大な影響を及ぼす。
 福島市民ならお気づきだろうが、震災の数年前から吾妻山の南側に新たな噴気吼が出来て蒸気を吹き出し続けていた。
 これも一種の予兆なのだろうが、万物の霊長とは無駄に長い天狗の鼻の様で、震災が起こってからそれが予兆と判る不思議な生物なのだ。
 噴気吼から大量の蒸気とはつまり、地殻そばにある水脈が猛烈に暖められた結果であり、温泉の最終体型と呼ぶべき代物(白もの?)である。
 当然、本来在るべき地下水脈が暖められ噴出すると言う事は、地上に吸い上げられている訳なので、温泉水脈が弱ってしまうのでは無いだろうか。
いわき湯本の様にお湯が増える所が在れば、逆に水脈すら途絶えて温泉井戸を掘り直す所すらあるのだ。
しかし、不動湯温泉はそんなレベルの話ではなかったのだ。



だからウキウキィ〜ワクワクゥ〜♪
こればっか(笑w
最初こそらしくない門が在る不動湯温泉。


だが、足を踏み入れると別次元の大正レトロへ。
道路愛好家に優しい一方通行の矢印が、
我々を誘う。大木に隠れているが、不動の祠がある。



実に味わい深い不動湯温泉 正面玄関。
この部分は昭和20年築、写真左側は大正8年の歴史在る木造部分3階建ての旅館である。


玄関東側は昭和20年創建の新館。
木造二階建てで、一階が旅館事務所、厨房など。
当然、客間は2階である。


玄関正面の一番奥に横向きの階段がある。
狭く急で、身長1m80cmで頭がぶつかる鴨。
降り口左に曲がる。


 不動湯温泉は大正8年の建築
木造部分3階立てにもなる立派な作りである。
 湯治宿泊も可能で旧館と本館があり、
源泉3、湯舟5つを持つ当時としても豪華な温泉だろうと思う。
 二階とも言える正面入口は、入ると広い玄関廊下の突き当たりにある、
狭い階段で一階下に降りる。大正に建てられ、昭和20年に増築された館内は薄暗く、通路・天井とも低く狭い。露天風呂へは入口に戻る様に進んで行く。
 途中、通路右の客間が解放されていたので覗くと、部屋同士が襖1枚で仕切られる部屋割りに驚く。成る程、大正創建は伊達ではない様だ。
 あの
高村光太郎・千恵子夫妻も訪れた歴史ある客間に、暫し見惚れる。


あとは道也直進(笑w
手前の扉が男女別のトイレ、完全個室である。


一段下がった所に在る
「常磐の湯」入口。
ここから道は急降下となる。


一階の部屋が開け放たれていた。
廊下とは障子戸一枚、
両隣とは襖1枚で仕切られている旧館の部屋。
まさに大正レトロだが、
テレビはしっかりデジタル。


1988年東宝映画「いこかもどろか」(原作:鎌田敏夫/監督:生野慈朗/主演:明石家さんま/大竹しのぶ)の舞台として使われた事も在る。
 因みにこの
1階の廊下にトイレが在り、ここで用を足さないと下に言ってからエラい事になる。
 などと考えていると、子供達がバタバタと下の温泉に向かって進んで行ってしまった。




これがウワサの「長命段」

完全に名前負けしている危険な階段である。踏み外せば"長命"どころか"永遠"となりそうだ。


そして、お決まりの叫び声。
「なんだ〜?この階段!!!」
そう、これが不動湯温泉名物の「長命段」であるが「歪んだ階段」として秘湯ファンの胸を鷲掴みしている。
 現在の建築基準法では考えられない急な階段、しかもところどころグニグニのたわみ具合は最早レトロを通り越して危険である。
 全80段在ると言われる階段の途中にシケインがあり、誂えたイスで休憩出来るが、座面も床も明らかに隣りを流れる不動沢に引っ張られて斜めってるのだ。気分良く座れる訳が無い。


途中に休憩所があるが、
傾いていて居心地悪い(笑w。



思い切り増感してやっと絵になる最後のコーナー。
ここも昭和20年の増築の際に建設されてと思わしき風情だ。
手書きの看板と今時有り得ない碍子の電線張り、
しかもここだけ電気が点かない。
実際にここは日中でも暗闇に近い。


「あれぇ?こんなに傾いていたっけ?」と違和感アリアリである。

 最後にクランクを介してようやく下に到着。露天風呂の看板の先に、まずは男女に分かれた内風呂が在る。
 男は左の羽衣の湯、右が婦人風呂(湯舟を直して檜風呂にした様だ)直進が「谷間の露天風呂」である。
 露天風呂の場合、ここで外用のスリッパに履き替えなければならないが、
温泉で用意したスリッパは三足、つまり露天風呂の定員は"3名"と言う事になる。
 そして、このスリッパが無いときは、内風呂で待たなければならない。まあ別に廊下で待っててもいいんだが、内風呂が基本だろう?
 尚、女性の方で混浴がキライと言う方はここで婦人風呂に入るのが懸命と思われます。
 ところがウチの子供達はそのままスリッパで外に出ちまった。(爆!
 外に出て露天風呂への道を見れば判る事だが、ここから最後1/3をさらに下るのだ。こうした温泉にはありがちだが、屋根付きの通路としては、今まで入浴した中で一番長い長い階段だ。
 最後まで行くと段数は100段前後になるだろう?108段だったら笑います。数えてないけど。
 やがて、最後のつづら折れに湯舟が見えて来た。最後は脱衣所の屋根をかすめ、到着。
 
その寸前に30中頃の女性が逃げる様に擦れ違った。あちゃぁ、最悪のシナリオだよ。
 下の子はお構い無しに服を脱ぎ始めていたが、流石に上の娘はビビっている。ていうかお前来てたのか?。
「上の婦人用に入ったら?」
「うん」



明るく見えるがここも鋭意増感中。
暗闇に見える「まさに天国への扉」
右が婦人風呂、左の電話の辺りに羽衣の湯


扉を開けると、延々と下りの階段がある。
石段になると大変滑り易いので注意。


写真は春先のものだが、秋にいったらこの辺はズルズル滑るのだ。脱衣所の屋根が見える。


"谷間の露天風呂"到着!! いわゆる川縁露天風呂だ。
初めて入浴したときはこんな屋根も脱衣所もなかったが。




露天風呂 全景。

つづら折れの一つ上から撮影。お湯の出口が変わった様だ。
早春と言う事も在って落葉が絨毯となって沢を彩る。



脱衣所が出来た為に滝が見え難くなってしまったが、悪くは無い風情だ。
湯舟自体の変わりはなさそう。
温泉の定員は3名である。


・・・・お前、家族風呂だったら入る気だったのかよ?
 つーか、湯舟には先程の女性の旦那様とおぼしき方が入浴していた。
「すいません、煩くおじゃましてしまって」
「大丈夫ですよ」と優しく答えて頂いた。東京からわざわざ毎年来ている常連さんの様だった。
 その方が上がると、子供と二人ゆったりと風呂を楽しむ。そして気が付いたのは、お湯の出口が昔と違う事だった。実はMR、10数年前にも不動湯に来ているのだが、湯舟後ろの岩盤が変わってコンクリート補強されている。
 静かなせせらぎの合間から、低いボイラーの音が聞こえるではないか?。思えば、掛け流しの源泉ももっと熱くなかっただろうか?

そんな疑問から、秋にもう一度訪れる事とした不動湯温泉。

 思い出では、湯舟正面の土手には真っ赤な紅葉が茂り、初雪の降った頃には沢谷全体が輝く様なコントラストであったと記憶していた。



秋の"谷間の露天風呂"揺れる木漏れ日と紅葉が美しい。


長命段の窓から大正旧館を望む。
う〜ん、絵になるなぁ


晩秋には谷間の湯が温すぎて、
羽衣の湯
(内風呂)に入る。


紅葉とのコントラストがいい。

 秋に当時一緒に行った会社の先輩とゆくと、先輩は明らかに情景が違うと明言した。脱衣所の前に在った小さな滝は玉石を組んだコンクリートで固められ、これは地滑りが起きた後に、河川改修があったと見て取れた。

 そのせいで、川向にあった紅葉の一群が消失したと考えられた。
成る程、土砂崩れがあったのなら、あの長い廊下が変形したのもその所為だろう。フル珍で沢を探すが、河川改修の銘板等は見付けられなかった。
「ン〜〜、残念」
そして春以上に晩秋は温かったのだ。
「いやいや、壁から滲み出たお湯も相当熱かった筈だよ」と先輩。外気温が低い(一桁そこそこ)のせいだろうか?春先に家族連れで来た時より温く感じる。
まるで「ぬる湯温泉」だ。(爆
 よく見ると、露天の方から見えない所にプレハブの建物が出来ていた。そこから煙突らしき・・え、沸かし?
 源泉温度が下がっているのか?地震の影響なのだろうか?
 何はともあれ、余りの温さに「谷間の露天風呂」を上がって、手前に在る「羽衣の湯」に入る事とした。

 「羽衣の湯」は「谷間の露天風呂」に降りる途中、高台の岩場に作られた檜風呂であり、コンクリートの台座に通路を挟んで婦人風呂とともに作られている。湯舟正面のサッシ戸が自由に開けられるので、在る意味露天風呂と大差がない。先輩と入浴した時間が3時過ぎとなっていた為に、夕日に透かされる紅葉の黄色が実に見事で見惚れてしまった。
 露天は少々幻滅だったが、羽衣は気分良く入浴出来た。他に11月から工事中にて休止していた(春に来た時はボイラー室が地震で転落していた)「常磐の湯」も再開していたが、当日は先客が居たため撮影しなかった。
 また家族風呂も在り、こちらはかなりレトロな味わいを感じる小さな風呂だった。
 機会があれば、また行ってみたい温泉であるが、
土湯女沼から不動湯温泉に向かう林道男沼線はナカナカの林道なので、車高の高い車で来る事をお薦めする。



"羽衣の湯"奥の広い湯舟にお湯の出口がある。
手前の浴槽は温く浅いので寝湯に最適だ。



これぞ、日本の温泉


土湯温泉「不動湯温泉 谷間の露天風呂」ほか内風呂
入浴料:大人500円 子供300円
入浴時間帯:朝10時〜午後3時まで

「谷間の露天風呂」
泉質:硫黄泉(含硫黄 ナトリウム 炭酸水素塩 硫酸塩 塩化物泉)
源泉温度:58℃
効能:神経痛 筋肉痛 関節痛 五十肩 運動麻痺 間接のこわばり 慢性消化器病 痔疾
   慢性皮膚病 慢性婦人病 きりきず うちみ くじき やけど 糖尿病 動脈硬化症
   疲労回復など



こちらは家族風呂(たまに婦人風呂)
タイル仕上げの浴槽は大正時代製?
時代錯誤な雰囲気を味わえそう。
二人しか入れません


「羽衣の湯」
泉質:単純泉
  (ナトリウム 炭酸水素塩 硫酸塩
  塩化物泉)
源泉温度:62℃
効能:慢性筋肉リウマチ 神経炎
   慢性間接リウマチ
   骨及び関節等の運動機障害
   外傷性障害後の後治療 疲労回復
   
「常磐の湯」
泉質:炭酸鉄泉(茶褐色がかっている)
源泉温度:48℃
効能:慢性筋肉リウマチ 貧血症 関節痛
   慢性間接リウマチ 更年期障害
   月経障害 慢性皮膚炎
注1)
「婦人風呂」「家族風呂」は単純硫黄泉で、泉質は羽衣の湯に準じます。
ただし、家族風呂は温い様です。


注2)
基本的に「婦人風呂」以外は、旅館側の都合で女性用だったり家族風呂だったりしますが、実はすべて"混浴"がデフォの様です。そしてどの風呂も旅館側に言えば入れる様です。