「奥」民宿舎
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 夕方5時過ぎ、玄関前に首謀者の燦さんのTDMと大佐のBMWを見つけ停車すると、早速三階から声が掛かる。
「MRさ〜ん」「どうも〜」
 昨年秋に福島で会った以来の燦さんである。フロントで記名し、早速部屋にお邪魔する。
今晩の宿「国民宿舎梅花皮(かいらぎ)荘」は飯豊山への登山ベースとして有名らしい。飯豊連峰を背景に佇む鉄筋コンクリート3階建ての建物はなかなかに重厚で、いかにも豪雪地帯らしい堅牢なイメージだ。
廊下、室内ともに飾り気のない質素な作りである。

 
 今宵集まる4人は、いずれも2年前にあの秋の三つ又で呑んだメンツである。
「お久しぶりです」と静かに挨拶する大佐。
「tkhtさんがまだ?」
「彼、よく迷うからねぇ」それでも6時頃にtkhtさんも無事到着、早速4人で夕食となった。

 夕食は食堂というのは国民宿舎らしい所だが、夕暮れの飯豊連峰を見つつ食べる夕食はなかなか良い雰囲気だった。
 他の登山客に比べ、
やたら写真を撮っている辺りがちょっと浮いているが(笑

 
夕食には燦さんが特別料理の熊汁と米沢牛のステーキを頼んでいてくれていて、この料理を頼むと特等席がもれなく付くようだ。
 
他の方は・・・・うん、旨そうに頂いてるな。

  一息ついて、食事の後に風呂にゆく。

 
燦さん情報に因れば露天はさらに別棟の日帰り温泉で、夜9時で終わりらしい。時計は既に8時半をすぎており、取り敢えず内風呂に入る。
 大佐は普段より距離を走ったせいか早々に食事を済ませると部屋で寝てしまっていた。燦さんいわく珍しい事らしい。
 梅花皮(かいらぎ)荘の西側に2階に当たる食堂の隣りに、別棟となる温泉棟に向かう連絡通路があり、ここから先は後から新規に増築された部分のようだ。増築部分から妙に「金を掛けて見まスた」的内装になっている。
 内風呂はいかんせん入浴客が多く、今晩の撮影は無理と判断する。まあ、登山客は朝早いだろうから朝風呂で撮影しよう。



熊汁は臭みが殆ど無く、黒々とした熊肉は、予想に反して軟らかく煮込まれていた。ちょっと堅めの牛肉みたいな感じ。!



米沢牛のステーキは霜降りの美味しいものだったが、ちょっと薄い、以前頂いた物よりとろみがある印象!



ソバ!蕎麦!
やはり蕎麦は水ですね。水の美味しい所には敵わないよ!


/Photo by 燦





06.07/08
国民宿舎梅花皮荘
Repo&Photo
/MR




夕食、特別席から飯豊山系を堪能する。にしても全然普通の食堂みたいだな。/Photo by 燦

 つい、マッサージチェアーなんぞに捕まってしまうMR。これが気持ちイイなどと思う辺り、寄る年波には勝てない(爆
 部屋に戻ると、風呂上がりtkhtさん土産のレモン牛乳?を飲みつつ雑談に励むが、やはり大佐の毒気がないと話が先にいかないようだ。こうして、飯豊の夜は更けてゆく。


それにしても男湯が
「なた」



女湯が「へら」


食堂の特別席から望む飯豊連峰、登山客にはたまらない風景だろう。
写真右手前がかいらぎ荘の展望温泉。その奥が別館となる川入荘。
別館は日帰り露天温泉である。


8日の理
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 妙に甘い夢で目が覚めた。昨晩の土産モノのせいだろうか?あまったるい味覚の残りを燦さんから頂いたコーヒーで洗い流す様に飲む。


三階の部屋から正面を撮影。/Photo by 燦

 外を見ると朝6時だというのに既に駐車場は登山客の出発ラッシュだった。
「ゆっくり行きましょう」
 バウンドの際は素晴らしい俊足を見せる(いや、実際にはまだ拝見してないのだが)燦さん、与えられた時間を最大限活用する術を知る発言である。頷く大佐もまた、旅の情緒を嗜むコトを知っている。
 土産物を振り分け、酒の利き酒もしてみる。大佐とMRが地酒を持参していた。あの林道の中、麒麟山は割れる事なくここまで運ばれた。tkhtさんのもう一つの土産であるシモツカレの由来と運用方法を大佐が解説する。
一同に笑いが零れる。

 部屋にかかってきた電話が早くも朝食を知らせる。
極めて普通の朝食を掻き込むが、変に味付けしなくても普通に美味しい処がいい。
 焼き魚ではなく、甘露煮と言う処がよかった。


朝食も無論写真撮影から始まる。不可思議な集団だよな、一般客から見ると。

 朝食後、昨夜のリベンジにもう一度朝風呂と洒落込む振りをして、カメラを片手に取材に勤しむMR。
旅に長けた二人に比べ、なんとせせこましいMRだろうか?
「俺も行きます」 tkhtさんと共に風呂場に行くと定石通りに男女の風呂場が入れ替わっていた。
それにしても男湯が「なた」女湯が「へら」休憩室が「狩り場」って・・・理解しがたいネーミングセンスだな。
 既に殆どの宿泊客が出立し、だれ〜もいない風呂場を二人で占拠する。
その後、部屋で2時間近く雑談した。
 束の間の悦楽を楽しみ、それぞれが身支度を始める。時計は間もなく10時を指そうとしていた。燦さんも重い腰を上げる。



休憩室が「狩り場」って・・
休憩室はマタギの資料館だった。
中央に飾られるのは熊打ち鉄砲。




シンプルな朝食。
ヤマメの甘露煮が好評



温泉分析表。
源泉地は約3Km奥らしい。


いい感じのヤレ具合だね。



源泉温度は51.5℃とあるが、
送湯管で冷めるようだ。
湯船は42.3℃とある。




黄金色に染まる湯船とこじんまりしたルーミーな浴室。外には飯豊山の山並みが望める。
泉質はナトリウム・カルシウム一塩化物・炭酸水素塩硫酸塩温泉。


 Check Out、駐車場でバイクの雑談を少々して、それぞれの目的地に向けて出発する。
次に会えるのは何時だろうか?。
 零度君と急がず、焦らず、楽しんでゆこう。
ツーリングの大原則を心に刻んで、今日も一人走り出す。
このバウンドの座談会が掲載されています。
Top

仮想空間座談会
http://www9.plala.or.jp/windy-excursion/northbound08.html


“oyobusa”・・・?。



集まる毎に乗るバイクが違う気がする。変わらないのはTDMくらいか?。


法則故に繰り返す
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 一本目の「内川林道」は残念ながらピストンであり、早速次の標的である大平峠に向かうべく、樽口峠を登り詰める。
 予想通り、峠一帯はワラビ園であり、既に昨日写真に収めた駐車場と雄大な飯豊山系の山並みも、ワラビ園が占領していた。樽口峠では何処かのサイクリングクラブの練習なのか?老若男女を問わないサイクラーがこの急な坂に挑んでいた。

 子持トンネルから叶沢大橋を通過の際、来る時は気づかなかったダムに沈んでゆくアスファルトロードを見つける。
「旧県道か・・・」
Gateを容易く突破するが、気温30度に迫る陽気は、旧道に
耐え難い悪臭を漂わせていた。


「た・・・タマラン」
この廃道は悪臭で撤退した。

 叶沢トンネルから桜峠に戻り、大平峠に進路を変える。大平峠は昨日の宇津峠にあった「越後街道13峠」に名を連ねる旧街道の峠である。
 無論明治期に経線は変更されているであろうが逝ってみる事となる。



空戻り覚悟の内川林道、
予定通り玉砕(爆。




樽口峠の東側には・・・。


足野水川林道、そそられるが
今回はパス。





横川ダム。先程の叶沢トンネルの反対側にあるダム展望台からは、
かつての県道が水没してゆくのが見える。



なかなかの極狭湾曲振りを見せる、山形“険道”15号線を桜峠に駆け上がる。
必要最小限に纏めるコンパクトなヘアピンが普通車のすれ違いを辛うじて許している。
無論、冬季は閉鎖。


 大平の集落を過ぎると、廃屋と共に舗装は途切れ、本日2本目のダートに突入する。
 大平林道は普遍的ともいえる山形の林道の表情を見せつつ、零度君は葛籠となった山道を登ってゆく。大平側の峠までは湧水地らしく至る所に水溜まりのような小さな湖沼群がある。先ほどの横川ダム湖畔が嘘の様に涼しい。体感気温でも5℃以上低いだろう。
 やがて零度君は小さな、と言うより“つつましい”と言えそうな峠にそそり立った、
大平峠である。


県道15号から分岐し、大平峠へ。



その名も「櫻橋」。
集落限界点でもある。


涼しい木漏れ日の林道に入る。


峠を越えると道路の補修が
見受けられる。



素朴でつつましい感じを受ける大平峠。


  峠からはさらに1本の経線が更に上を目指していたが、車が入れる状況ではなく旧道か畑への連絡道と見た。燦さんに到達の写メールをお送りするが、圏外だ。
 ところが、山の神(胡桃平)へ200mほど下った所で、地図にないT字路とぶつかったのだ。
 路面状況から、明らかに今通ってきた大平峠より交通量がある。引かれている砂利も新しい。部落への下り坂は舗装である。またビストン林道かも・・・・?



大平林道の山の神側終点。
地図にない写真右手の林道は何処へ行くのだろうか?


迷宮林道再び・・・
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「迷うのも、また楽しい・・・かな?」
結果から言って、判断は正しかったのだ。この林道・・・「大規模林道大平峠線」は、まだどの最新地図にも完全連結されていない、未知の林道だったのである。

 林道は延々と山脈の尾根沿いに向けて突き進んでいた。近年に開削された事はその直線的な経線からも明らかだ。15分も走ると、先ほどまでの山の中の小さな峠からは想像も付かない程の標高に零度は連れ去られていた。一つ尾根を越える直前に山菜採りとおぼしき車に出会う。道端をおばあさんが二人、今まさに山に入ろうと吟味していた。
「すいません」バイクを停めると二人のおばあさんがMRを見上げる。姉妹だな。
「この道は何処に出るんですか?」
「はぁ・・は?」もう一度聞き直すと、二人同時に答えが返ってきた。
「しらこざわだぁ」
「しらこざわ・・・ですね、ありがとうございます」
姉妹の婆さんに見送られつつ、頭の中で地図をスクロールするが地名は思い当たらない。しかし尾根越えすると、はるか向かいの別な山脈まで延々と林道が続いていたのだ。


天然冷蔵庫発見。実に涼しい・・・。

「なんだこりゃ〜〜」
一体何処に出るんだ?日陰で一休みして地図を見なければ・・・と思いつつメーターは3桁に届こうかというイキオイで零度君は長いなが〜い直線を全力で下っていた。
 皆無に近いであろう対向車を胸に、零度君は快調に林道を責め立てていた。しかし、8万キロにカウントダウンを始めたリアサスペンションが強大な加重の掛かる高速オフ走行に悲鳴を上げつつあった。



取り敢えず日陰で一休み。



問題の道は空への路。



林道版ミステリーツアーだな。



まだ雪の状態で残ってるよ。



遠く見える牧草地の様な所が白子沢部落のワラビ園。


 
砂利の深い所やいわゆるウオッシュボードと呼ばれる路面状況ではちょっとしたバランスで挙動が失われていた。

白子沢ワラビ園、かなりの面積を営林署からお借りしているのだろうが・・観光バスかい。

 隣の尾根に渡る僅かな間に林道は一時降下する。谷間には6月だというのに未だ残雪が冷気を放っていた。そして、目前にまたしても展開する「わらびの里」。しかもここから白子沢の部落(県道15号線)まで
「林道を観光バスが走っている!」なんてこったい・・・?
 部落へのT字路で初めてこの林道が宇津峠から始まり大平峠に抜けるのかが解った。


「大規模林道大平峠線」と言うらしい。

 全長は20.4Kmとある。部分的に舗装もあるが8割はダートで、県道15号に平行している置賜営林署お得意の高原スカイラインである。
 部落に下りてゆく観光バスやジモティの軽トラを横目に、T字路を宇津峠に向かって進撃を開始する。


ワラビ園の出入り口に看板。



でかい看板がある!
慌てて停車。



ワラビ園から5分程でT字路に到着。左折が高松線、右が大平峠線。



森残川を渡って大平峠線後半戦へ。



次のY字路は広域マップルですら方向を失う程何も書いていない。
無論、建っている看板では解るはずもない。


 
地図上ではそれぞれの沢に林道があるが、それを尾根沿いで繋いだ様だ。一度沢沿いに降下した林道は再び尾根に向かって登り次いでゆく。見覚えのある高架線が目を引いた。
「確か、宇津峠の山頂にも高架線があったな・・・」
 目安が付いたものの、次のY字路は迷う。
 此処にも例の林道路線表示板が在ったのだが、現在位置と方向がおかしい。意を決して左折すると、見事県道沿いの沼沢部落に到達してしまう・・・。


県道15号線沿いの沼沢地区に出てしまう。

戻ろうとも考えたが、山から下りてくる観光バスを見た瞬間、その計画は中止した。
「反対側から逝ってみよう」
県道15号を下り国道113号線を東に向かうと、15分ほどで宇津峠の西側に辿り着く。手前の橋の袂のT字路から、その林道には突入出来た。


やむなく、宇津峠まで移動し、起点から逆走?する。

「腹が減ったな・・」時計を見ると既に時間は午後となっていた。
今日も飯抜きで迷宮林道の解明に向かうのか・・・?


そのY字路を左折する。
イヤな予感がするなあ・・。




うぉ!?もしかして県道?



宇津峠から登って行く。



相変わらず広々した大平峠線



大規模なズリ棄て場と思われる台地がある。見晴らしは良い。

謎は謎のままとして・・・
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沼沢部落のワラビ園としてここから先は通行を禁止されている。
期間は5月末の日曜から7月2週目の土日まで。6月は平日も全面通行止っぽい。



 
二日面の後半僅かになっても、未だ林道の全容は明らかではなかった。
 この大規模林道を終点側から逆走してきた訳だが、ミスコースにて今度は宇津峠の起点から登ると、相変わらず上昇気運のこの林道は、予想通り宇津峠直上を走る高圧線に路線方向を合わせ、西へ進撃を開始した。だが、ついに林道を先程のY字路まで通行することは出来なかった。
 尾根沿いの高圧線直下にはワラビ園への立ち入りを規制するチェーンがいたのだ。
「やってくれるぜ・・・」
しかも眼下に広がるワラビ園の管理事務所からこちらは丸見えである。ここはやむなく撤退、宿題を残す事となった。来た道を引き返す。

 帰る途中、周りの風景を眺めて、ハタと気が付いて立ち止まる。
「この幅広い林道は昨日宇津峠の旧道から見えたぞ」
バイクを路肩に止めるとヘルメットを脱いで、煙草に火を入れる。

無事旧街道に出る。写真は直進が宇津峠、右が大規模林道大平峠線に接続する伐採道である。

ゆっくりと、周りを俯瞰する。
 成る程、どうやらあの辺が道のようだ、そういや、この少し下にT字路があったな・・・?
 煙草を消して生暖かくなったイオン飲料を飲み干すと、目星を付けた林道に突入する。思惑通り伐採道のような細身から、あの旧道の例の記念碑の下に辿り着いた。念のため、宇津トンネルの東側抗口にも行き、旧街道の出入り口を確認する。
「お膳立ては揃ったな・・・」


宇津峠の山頂まで延びる高圧線、
その直下に林道はある。




枝道を進んでみる。
奥が大規模林道本線。




ダブルトラックにたっぷりと
水たまり・・歓迎されてるなぁ。




国道113号線、宇津トンネル西抗口先の橋の袂からが左折(写真左手へ)すると
起点である大規模林道大平峠線。いづれ全線通過をしなくては?

エピローグ、そして・・・。
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時計は既に2時を過ぎていた。
 宇津峠のクライマックスをどうしようかと煙草を吸っていると、流石電波塔がある宇津峠、メールが入ってきた。それは神様からの”天の声”であった。
「泣く子と何とやらには、勝てんな・・・?」
病院に行く程ではないが、子供が熱を出しているので至急帰還せよというのだ。


抗口手前までは地元企業の作業場導入路になっているので、僅かに通行量があるようだ。

 迷宮林道のファイナルステージは晩秋までの宿題と言うことで、帰路に就いたMRであった。



最後に旧宇津トンネル東側抗口に
向かう。




旧道東抗口は現国道の橋を潜ってゆく。この写真から直ぐの所に旧街道の入口がある。



旧宇津トンネル東側抗口。山形を示すモニュメントであろうか?この形状は。







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