Spring Tour's 2006
       〜Natui River?〜
 
「夏井千本桜ヲ堪能ス」

最近はバイクを押して歩くようなハードなものばかりだった。

季節は春、
 うららかな日差しを受けて咲く代表的な花と言えば「さくら」である。
しかしそんな季節感とは無関係に仕事が錯綜し、とてものんびり1日かけて花見には行けそうにもない。
どうする>・フル、どうする>俺。
「朝のうち見に行くか?」コレしかない。
いきなりで当然誰も誘えそうにないので、一人で逝く事となった。

前哨戦?「小沢の桜」

 早朝4時半の国道349号線に農作業用の軽虎以外の影はなく、路肩の田圃からいきなり国道に顔を出す「燃える漢のォ赤いトラクタ〜」に注意しつつ突っ走る。前回好評を博した岩代の「戦場のしだれ桜」はすでにほぼ散っており、やわらかな青葉のカーテンとなっていた。流石に例年より一週間遅いとはいえGWまでは届かない。ここにはいつの間にか桜ロードという遊歩道が開削(?)されていた。
 零度は船引に入り県道50号浪江三春線と合流、船引駅の東側の新興住宅地の中を駆け抜ける。国道288号線を交差し、南へと国道349を攻め下る。

 3万円で譲渡した零度君は3年の時空を越えて同じ値段で引き戻されるという離れ業が成立し、バッテリーが新品以外はほぼ草臥れた状態で我が家にやってきた。実質1万8千円也という価格はまさに破格。最悪何時谷落ちしても我が身が助かればよい!というお値段である。ちなみに、悪いところを直そうと思えば10万位はだまって掛かろうか?ハンドルグリップ・オイル関連・エアフィルターの交換、さらにBOXの装着までに要した金額はほぼ1万円であった。
 そして保険の期限がGW一杯なので目一杯走らせよう、あとはBajaの様子次第だ、となった。 


小沢の桜

何だか2年前より一回り大きくなった気がする。左手の枝は農道を越えそうだ。

 
 などと考えていると目の前に立派に咲き誇るStandAloneな巨木を発見する。すでにカメラ親父どもが集まってるようだ。
「咲いていたか!
  “小沢の桜”!」


一昨年は3日と違わぬ開花だった戦場のしだれ桜が散っていたのに、小沢の桜は満開の最終日の様だ。
朝日に照らされる花びらがひときわ輝いている。これは思わぬ収穫だ。

 早速停車して…と、駐車場が増えている。国道下にも砂利引きながら駐車場が出来ていて、早速乗り付け記念撮影。(何の?)この桜が有名な理由は前回のReportを参照のこと。
有終の美ともいうべき桜をご覧あれ。 



単に1本で咲いているからではなく、この形がいいのではないだろうか?



アマチュア写真家の恰好の題材だろう。この日も10数人が訪れていた。


本命!「夏井の千本桜」

 小沢の桜を後にして、零度は一路小野町に向かう。
 途中から絡まるように国道の頭上を右へ左へと竜の如くのたうつのは磐越道、丁度阿武隈SA辺りから同じ方向に流れてゆく。風越峠の旧道に入りたい衝動を抑えつつ、高速と列んで穴を穿つ風越トンネルを走り抜ける。
 下りでは3桁にスピードが届く、とても6万2千を走破したエンジンとは思えない程に回っている。「このエンジンはアタリだぜェ」という某紅豚の迷セリフを思い出す。しかし悲しいかなそこは事故車、両手を話すと小刻みなヨーイングが発生する。コーナーで倒し込むとアクセルをあけて車体が起きるときに違和感を感じる。左コーナーの掴みが悪い感じで少しばたつく。
 まあ、前のオーナーはサージング起こすほど突っ込んで倒し込む人じゃないので、多分一生気が付くまい。
 小野町は市内を通る県道41号に乗り換える。この後は高速の変わりに磐越東線がまとわりつく。右に左にと夏井川に沿って零度は左右に振り子運動を繰り返す。視界が開けると国道は緩やかな直線となり地平線の天と地の間に横一線のピンク色の帯が横たわる。


夏井の千本桜

町民の努力の結晶とも言える美しい花びらが風にそよぐ。


町の広報資料に因れば
由来
 夏井川は、福島県東部の阿武隈山地中央部に源を発し、西流して小野町夏井地区で南東に向きを変え、いわき市を北部を横断し太平洋に注いでいる67.1キロメートルの2級河川です。河川沿いの耕地が土地改良事業により構造改善され、同地区の河川の改修を契機に、地区有志のみなさんが昭和50年4月に植樹したのが始まりでした。夏井地区、南田原井地区の有志の方々が夏井川の両岸5キロメートルに渡り、ソメイ吉野の苗木1,150本を植樹したのが、今日の夏井千本桜です。
 この桜の植樹は地区有志の皆さんが「美しい環境をつくりろう」「緑を求め、花を愛し情緒豊かな人間性を育てよう」そして「郷土の発展を図ろう」と、地域住民の皆さんに呼かけ、その結果、地域のほぼ全戸の協力や事業所、同地区出身者などからの寄付がよせられ実現したものです。
 現在、この地区では、2つの行政区、地元商工会、神社の集合組織から「夏井千本桜祭実行委員会」を組織し、千本桜の手入れや、保存に力を注いでおります。地区の皆さんがボランティアにより「自分たちの地区の桜は自分たちの手で」という気持ちで手入れをし、病気に弱いソメイヨシノを守っています。
(一部抜粋)

ということだが、31年前という割と若い並木であることが伺える。また、夏井川河川敷両岸5Kmに渡ってと解説されるも実際には支流流域にも両岸に植樹され、その延長は直線に直すと片側12Kmはあろうかという並木になっている。有名になったのは1995年に磐越自動車道が開通した折りで、この頃から町の観光課も本腰を入れたようだ。因みにGWに満開だったのは2000年以来とのこと、今年は運が良かったと言える。

 小野町指定の駐車場は看板と露店で一目で確認できた。さて、どこからバイクで入ろう?と思ったところ、いきなりジモティのタウンエースとおぼしき車両が指定駐車場の前にある夏井小学校と夏井川の間の道路に橋の欄干に追突しそうな感じで右折、これだ!とばかりに後を追う。
 進入禁止になっていないのは公共施設があるためだが、先へ行くと小さな橋がもう一つあり、そこまでは舗装、その先は護岸工事がされてない未舗装区間があり、程なく磐越東線の足下で桜並木が終わる。おお、鉄道ファンには溜まらないであろう桜の中を走るヂーゼル機関車が見れそうな風情だ。引き返して小学校の奥にある小さな橋から対岸に渡る。

 ハザードを挙げながら2速アイドリングのみで走る零度の車速は時速5〜7Km、自転車並で並木を楽しむ。時折バイクを停めて桜を撮影する。先ほどの露店が列ぶ駐車場には朝6時だというのに人影が多く見られるが、こちらは誰も通らない。








桜堤の最後は磐越東線にぶつかっておわる。右手奥の一段高いところが線路。


桜堤の最も西側(上流側)にある橋。正面の橋は県道286号。
護岸左手の影は夏井小学校校舎の影で、286号を挟んで正面に町営駐車場がある。


県道286号沿いの支流にも植樹がされている。延々と桜並木が続く。


 もしあなたがロードバイクで見に来たなら夏井小学校側(上流西側)はお勧めである。
 この後、対岸(川の北側)を延々走ってゆく。夏井川に流れ込む支流に工事中の橋があり、その袂から田圃道と同義語と化した未舗装の堤防に入る。支流部分のこちらも人影はない。気にせず前進を続けるがメインだから途中で戻ることになるだろう。
と、思っていたら露店の対岸に難なく入ってしまった。近くに田圃を耕すトラクターのおっちゃんと目が合い、思わずにこやかに会釈すると相手も笑って返したくれた。
これは…
「逝って良し!」
という意味か?!(大違w〜

とかいって鯉のぼりが連なる中央の橋まで来てしまった。

 時計は朝7時を指しているのにご覧のように大勢の人が既に桜を楽しんでいた。バイクおやじがこの中に乱入するのはあまりに常識を逸している。橋は渡れないのでこのまま川沿いに前進するしかない。じゃあさっきのトラクターおっちゃんの微笑みは…?
(まだ違w〜
 かくして結局北側のメインは総て通り抜けしてしまった。そして気が付く!
「通行禁止の看板がある」
 
そう、あまりにマイナーで普通入らないところからスルーしたため解らなかったが、実は一般観覧“車”通行禁止だったのである。
じゃあ、さっきのトラクターおっちゃんの微笑みは…
(ぐるぐる>思考が彷徨う音)









清々しい香漂う朝の桜堤。必見の価値ある物件です。


 何げに犯罪を犯しつつ、今度は先ほどのような事もなく川沿いを桜が無くなるまで抜けてみた。
最後に、名残惜しく零度を撮影して帰り足となる。







永泉寺の枝垂桜



上↑
お寺の庭先にぽつんと咲く。背景に映える美しく力づよい桜である。


左←
本堂の裏にある別なお堂の参道にはソメイヨシノが咲き誇る。
すぐ側の桜は散ろうというのに。





後祭り?
「永泉寺の枝垂桜」


 本来同じ道を引き返すのはポリシーに反するがやむを得ず風越トンネルを通過する。トンネルの北、船引側にあるのが永泉寺であり、ここには滝桜の後継といわれるエドヒガン系ベニシダレザクラがある。
 散り始めながらも樹齢400年と言われる巨木は元気で、永泉寺の赤い屋根、バックの杉林の深い緑と青空を入れても十分見劣りしない。根回り5.45m・樹高12.5mはビル3階分に匹敵する高さだ。あと2日早ければきっと満開だったろう。

 ここにもカメラ爺が出没し、盛んにシャッターを切っている。
また境内にもソメイヨシノが幾つかあり、先を争うように場所を確保して撮影していた。

 夜桜も楽しめるように長イスやライトが設置されるが、どうみてもどこぞの橋が解体された折りに貰ってきたような水銀灯?である。
さらに境内正面にはお寺の方が芳名帳と甘茶を用意してくれていて、凍えた手と臓腑に暖かさが染みてゆく思いでした。もちろんお賽銭は忘れてません。




3方を山とお寺に囲まれ風雨に強い立地条件と住職の愛情が伝わる。


早起きは三文の徳とは言われるが、MRにとってはそれ以上に値打ちのある春の早朝ツーリングでした。


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